誕生日は迫っている。
「上林先輩、こんにちは」
さて、花音は文化祭で少なからず挨拶したあとから、俺と出会うと会釈をしたり挨拶ぐらいは交わすようになった。
まぁ、顔見知りになったのに花音が挨拶をしないというのもおかしい話なので、そのことは特に騒がれてはいない。学年がそもそも違うから学園ではたまたま顔を合わせることも少ないしな。
ただ花音のファンには「いいなぁ」「俺も花音ちゃんのお兄さんと回りたかった。そうしたら花音ちゃんに……」みたいにうらやましがられることは時々あったが。
まぁ、時々花音が俺に会釈したりすると、花音のファンクラブらしい生徒に睨まれることはあるけど。
ちなみに学園でたまたま顔を合わせられたあとの花音は、「きー君、きー君、今日顔あわせられたね! きー君と学園であえっとめっちゃテンションあがるんよね。学園でのきー君みれっともよかよね」となぜかテンションがいつも高い。
なんだか花音は俺と学園で遭遇出来たりすると、ゲームでレアキャラクターに会った時のようなそんな気持ちになっているようだ。俺も花音と学園で遭遇すると、家での花音とのギャップに何だか笑いそうになる。
花音と母さんが話して、そのまま俺は花音の家にお持ち帰りされそうだ。まだ花音亜kら許可が出たとかそういう話は聞いてないけど、そういう予感である。
俺としてはありがたい話だが、本当に家族ではない俺が家族の集まりに行っていいものかという不安は大きい。行くことになるなら色々とお土産を買っていって、お手伝いなども率先してやろうと思う。
でもその前に……12月には花音の誕生日がある。12月7日にある花音の誕生日……。その誕生日は土曜日なので、それに向けて花音の誕生日をお祝いしたいと思う。
お出かけの時に帽子を渡していただけであれだけ花音は喜んでいたのだ。もっと盛大にお祝いをしたら花音はどんなふうに喜ぶだろうかと思うと盛大にお祝いしたいな。花音が驚くぐらいに。
そうと決まれば、凛久さんに連絡を入れた。どうせ、凛久さんも土曜日はうちにくるだろうし。あとは花音が楽しめるようになら……花音の素をしっているゆうきや的場先輩も呼んだ方がいいだろうか。
人数多い方が楽しいだろうか……とそんな花音の誕生日に思いをはせる。
凛久さんに連絡を入れたら「当然、俺も花音を祝う」と連絡が来た。あとで俺と電話したいと言われたが……、花音は本当に夜遅くまで俺の家にいるから、凛久さんに電話すると花音に悟られそうだしなぁ。
そんな風に思いながら「夜まで花音がいるから電話出来ないかも」と連絡を入れれば、「じゃあ夜中に電話する」と言われた。まぁ、俺も少しぐらい夜更かししても問題ないので了承の言葉を送っておいた。
花音をどんなふうに喜ばせようかとそればかり俺は考えている。
「きー君、どがんしたと? なんか落ち着かん様子やけど」
「何でもない」
家に戻ってからも、俺は花音への誕生日プレゼントどうしようかなと考えていた。そうして考え込んでいたら、花音に不思議がられてしまった。
花音に誕生日で盛大にお祝いしようとしていることを悟られないようにしたいなと思う。
折角ならこっそりやって花音を喜ばせたいしなぁ。「変なきー君」なんていって笑う花音をもっと笑顔にさせられたらなぁ、とそんな気持ちになる。
そこまで考えて、俺が人の誕生日をここまで祝いたいなんて思うのも久しぶりだなと考える。こんな風に考えるのは俺が花音とそれだけ仲良くなったという証だろう。
「ねーねー、きー君、ご飯食べたらテレビみよーよ。私みたかテレビあっとよね」
「ああ」
夕飯を二人で食べた後は、花音が見たいというテレビ番組を一緒に見た。そしてあっと言う間に花音と過ごす時間は過ぎていく。
「じゃあ、きー君、私かえっけん。また明日。おやすみなさい、きー君」
「ああ、おやすみ、花音」
花音が帰った後に、凛久さんに連絡を入れる。
すぐさま電話がかかってきてびっくりした。……待ち構えていたのですが。
「凛久さん、こんばんは」
『おう。こんばんは。喜一。それで花音の誕生日についてだろう? どうする? 一人暮らしして初めての花音の誕生日だからな。花音が寂しくないようにしないとな』
そういう凛久さんに、ゆうきと的場先輩を誘ってもよいかというのを確認する。
そうすれば凛久さんは的場先輩のことを苦手に思っているのか、「あいつもか」と言っていたが、花音が喜ぶだろうと「そうだな、呼ぶか」と返事をしていた。
その後、凛久さんと一緒に花音の誕生日をどんなふうに祝うかということを話し合った。そうしていればすっかり夜中になってしまったので、続きは明日以降に話し合うことにする。
明日になったらゆうきと的場先輩にも花音の誕生日を祝いに来ないか誘ってみよう。
そう考えながらベッドで眠り、次の日の朝……、
「きー君、おはようございまーす。って、あれ、きー君、ねむかと? 二度寝すー? 私の膝で良かったらかすよ?」
すっかり眠くて仕方がない俺は、花音にそんなことを言われてしまうのだった。
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