誕生日の準備

 花音の誕生日をお祝いしようと俺は動いている。花音には「なんだか様子へんやねー」って言われたりしているけれど、まぁ、なんとか隠せてはいるのではないかと思っている。



 ゆうきと的場先輩の事は、花音の誕生日を祝うのに誘っている。二人とも参加すると快諾してくれた。



 それにしても花音の誕生日のためにどうしようかなーっと考えて居たら、的場先輩が料理を作ってくれると言ってくれた。的場先輩は料理が得意らしい。

 的場先輩が家から料理を持ってきてくれるということになった。凛久さんとゆうきもそれを手伝うことに決まったらしい。俺には当日、いつも通り過ごして、花音を引き付けていてほしいらしい。まぁ、確かに花音は俺が何か変わった行動起こしたらすぐに気づいてしまうだろうしな。




「花音、ちょっと俺、明日はゆうきと出かけるから」

「はーい。了解です。やったら、私は夕飯作ってきー君待っとくけん!」

「ああ」




 ゆうきと一緒に出掛けることはたまにあるので、花音も快くうなずく。それにしても俺が出かけていても普通に俺の部屋にいる気満々である。



 花音への誕生日プレゼント何を買おうか?

 お出かけする時のプレゼントも悩んだけれど、誕生日プレゼントも悩む。花音はどういったものをプレゼントすれば、花音は喜ぶだろうか。なんでも花音は俺のあげたプレゼントを喜んでくれると思うけれど……どうせなら何よりも喜んでくれるものが良いだろうし。








 翌日、俺とゆうきはショッピングセンターに向かっていた。




「喜一、俺も参加してしまっていいのか」

「もちろん。凛久さんも大勢の方が喜ぶだろうって言っていたし」

「……あの人のお兄さんかぁ。人気者たちの中に俺が混ざるのもなんかいいのかなって感じだけどな」

「それ言うなら俺もだよ。あの兄妹と先輩とだと……よく考えると不思議な気持ちだな」

「いや、喜一はメインだろう。俺の方がおまけみたいな立ち位置で、いいのかなという感じだけどな」




 花音がいるのがすっかり当たり前になっているし、凛久さんが土日に俺の家に来るのも当たり前になっているけど、よく考えると本当に不思議な気持ちだ。



 ゆうきと二人で会話を交わしながら、色々と見て回る。

 この前帽子をプレゼントしたしなぁ……。同じように帽子をあげるのはもちろん、なしとして本当にどうしようか。




「あれ、上林君、永沢君、お買い物?」



 そんな声が聞こえて、そちらを振り向けば……、そこにいたのは明知であった。明知も買い物をしていたらしい。




「明知も買い物か?」

「明知さん、放課後に会えるとは奇遇だね」



 明知は相変わらずにこにこしながら俺達を見ている。




「ちょっと買い物しようと思って。セールもやっているしね。上林君と永沢君は……何かプレゼント選び?」

「どうしてわかったんだ?」

「だって、此処って女の子向けの小物や洋服のエリアじゃない。プレゼントかなって」



 ……確かに俺とゆうきで女性向けのエリアにいたらプレゼントだろうとは思えるだろうな。




「そうだな。ちょっと仲よくしている友人へのプレゼントだ」

「そうなのね。噂になっていたお出かけしていたっていう女の子に?」

 倉敷たちに花音と出かけたことを見られて、教室で話していたから明知も知っていたのだろう。

「うん。まぁ、そうだな」

「へぇ……。その子とよっぽど仲が良いんだね。上林君」



 明知は何か考えるような態度でそんなことを言った。



「ねぇ、上林君、永沢君、もしよかったら一緒にそのプレゼント選び手伝おうか? 同性の方がプレゼント選びやすいかなと思って」




 明知は笑みを浮かべてそう問いかけてくる。

 確かに女性である明知に協力してもらった方が、花音への誕生日プレゼントを選びやすいのかもしれない。

 でも花音の誕生日プレゼントを選ぶなら、明知に花音の事が悟られそうだし……、それに花音は人の意見に左右されて選んだプレゼントより、俺が選んだものの方が喜びそうだしなぁ。


 そう思ったので明知からの申し出は断っておいた。




 その後、明知は「そう。じゃあ、私はもう行くわね」といって去っていった。





「明知さんって結構喜一に話しかけるよな」

「明知は誰にでも話しかけるだろ」

「そうか? 沢山話しかけているように思えるけど……」



 ゆうきにそんなことを言われてしまったが、明知は誰にでも話しかけるような優しい生徒なのだ。俺に良く話しかけているということはないと思う。








 その後はゆうきと一緒に花音への誕生日プレゼントを選んだ。花音へのプレゼントは一旦、ゆうきに持ち帰ってもらうことにした。このまま家に持ち帰れば確実に花音にバレる気がしたからだ。

 それ以外にも必要なものを購入して俺は帰宅した。








 そうこうして準備を進めていればあっと言う間に時は過ぎて行った。



 そして花音の誕生日の前日。金曜日のその日は、花音の誕生日だということで学園自体が盛り上がっていた。



 皆が花音にプレゼントを差し出し、花音が笑顔でそれを受け取っていたと聞いた。

 家に帰った花音が「いっぱいプレゼントもらったんよー。でも明日、きー君にお祝いしてもらえると思うとめっちゃ楽しみなんよー」とそんな風に期待したように俺を見ていた。



 まぁ、流石に俺が花音の誕生日を祝わないとは花音も思っていないのだろう。多分俺と凛久さんがお祝いをしてくれるとは思っていると思う。

 明日、ゆうきや的場先輩が祝いに来るとかは思っていないだろうなぁ。花音を驚かせて、喜ばせられたらいいなぁと俺はそんな風に思うのだった。

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