おでかけの翌日

 目を覚ます。

 体に温かい何かを感じて、自分は何処で寝ているのだろうかと、寝ぼけたままでそちらを見て、俺は驚いた。



 花音が隣で寝ていた。



 昨日のことを思い起こす。確か花音とソファに座って話していて、しゃべっていると眠くなって……それで、俺は眠ってしまったのだ。花音も俺と一緒で眠くなって寝てしまったのだろうか。俺の体にべたっとくっついて、眠っている花音。



 俺が起き上がったら花音の目が覚めそうな気がして、どうしようかなと悩む。

 一先ずまだ眠気も覚めていないし、花音を起こさないためにも俺はそのまままた目を閉じてしまった。どうせ今日も日曜日で休みだし、いいやとまた眠った。




「……きー君」



 しばらく目を閉じて、また眠りの世界に旅立って行こうとしていたが……ちょうどそのタイミングで花音が目を覚ましたらしい。



 また目を覚ます。そうすれば、花音がまだ隣にいる。花音は隣にいたまま、俺のことをじーっと見ている。



「花音、おはよう」

「おはようございます、きー君」

「花音もここで寝たんだな……。っていうか、パジャマだけど、わざわざ着替えたのか?」



 さっき一瞬目が覚めた時は気にしていなかったけれど、花音はパジャマに着替えていた。わざわざ着替えてからまたソファに戻ってきたんだろうか。



「ふふふ、きー君の寝顔を眺めたいなーって思ってパジャマに着替えて見てたのです。きー君が目を覚めて、帰ってというなら帰ろうと思ったんですけど、きー君、ぐっすりでしたから私もそのまま部屋にいたんですよ。それで眠くなってそのまま寝ちゃったんですよ」



 にこにこ笑いながらそんなことを言われた。

 なんというか、本当に警戒心がなさすぎると思う。別に俺の家で眠っていることは驚いたけど構わないけれど……、俺が花音を襲うような人間だったら大変なことになるだろうに。




「きー君、朝ごはん何食べます? パンとかならありますけど」

「そうだな。パン食べる。でもまだ眠い」

「ふふふ、私もまだ、眠いですよー。なんだかきー君と隣り合って眠るのもいいですねー」



 ……などと言いながら花音は俺から体を放さない。しばらく二人でまだ眠いからとぼーっとしながらソファに座って会話を交わしていた。




 十分少々経ってからようやく俺と花音は本格的に目を覚まして、動き始めた。







 順番に顔を洗って、前に購入していたパンを食べる。

 パンをもそもそ食べながら時間を確認すれば、今はまだ朝の八時。今日は一日どうしようか。



「きー君、今日は何をします?」

「んー、勉強したり、ゲームしようかなと思うけど。とりあえず先に勉強するか。ゲームしたら勉強さぼりそうだし」

「きー君、真面目ですよねー。私も宿題やろうかな。あときー君の先生もやりますよー。その前にパジャマのままもアレなので、着替えてきまーす」



 花音はそう言って一度、部屋へと戻っていった。そして戻ってきた時にはパジャマから着替えて、ノートなどを持ってきていた。



 朝からしばらく勉強をやることにする。

 期末テストもあるし、ちゃんと勉強をしておかないと。昨日は花音と出かけていていて勉強とか全然できていないし。




「きー君、私は先生役もやりますからね!! 分からなかったら聞いてくださいね」



 眼鏡をかけて先制モードになっている花音は、にこにこと笑ってそう告げる。そんな花音の言葉と共に勉強時間が始まった。

 勉強をしながら分からない所は花音に聞く。花音から勉強を学ぶと、するすると頭の中に入ってきて、自分も頭が良くなった気持ちになる。



「きー君、これはですねー」

「そうです。それです!! きー君はとても良い生徒ですねー。ふふふ、先生は鼻が高いですよ」

「喜一君、いい子です!!」



 なんか素の花音と、先生モードの花音が混ざっている。花音に勉強を教えてもらって午前中は勉強を頑張った。



 昼ご飯は花音が「きー君は勉強を頑張りましたからね!! 私が作りますよー」なんていって作ってくれた。

 花音が作った昼食を食べながらスマホを見れば、凛久さんから連絡が来ていた。



『花音とのデートはどうだったか? 来週はそっちに俺も行くからな』

『花音とのお出かけは楽しかったですよ。分かりました』



 今週は花音に言われてこっちに凛久さんは来ていないが、来週はまた来る予定らしい。今の所、何か予定が入っているというわけでもないので、別に構わない。どうせ家にいるだけだしな。




「お兄ちゃんですか?」

「ああ」

「お兄ちゃんに私きー君とのデートがいかに楽しかったか、沢山自慢したんですよー。私の方がお兄ちゃんよりきー君と仲良しですから」

「そうか。来週、凛久さん来るって」

「ふふ、じゃあ、来週は直にお兄ちゃんに自慢します」



 花音は俺とのお出かけをなぜか自慢する気満々らしい。




「お母さんと幼馴染にも自慢しました!!」

「そうなのか?」

「はい!! きー君とのデート楽しかったから皆にきー君と私は仲良しなんだって言いふらしたくて!! こっちだと私仲良い人あんまりいないから言いふらせなくて残念です」



 花音はもし仲が良い人が学園に居たら言いふらす気だったのだろうか……。俺と出かけたのがそれだけ楽しいと言ってくれると、純粋に嬉しい。

 昼ご飯を食べた後は、花音とゲームを食べたり、漫画を読んで過ごすのだった。


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