おでかけ後の学園
休日明け、俺は学園に登校している。今日も朝から花音が家にやってきて、一緒に朝食を食べた。
……昨日、花音は家に泊りたそうにしていたが、流石に断った。土曜日は俺が眠っていたから、花音は俺の隣で眠っていたけれどな。
「喜一、おはよう」
「おはよう」
ゆうきに声をかけられて、朝の挨拶をする。
そしていつも通りの日常を行おうとしていたのだが、予想外に三瓶に話しかけられた。三瓶とはそんなに話したことはないから、突然話しかけてきて少し驚いた。
「ねぇ、上林君、土曜日にスイーツ祭りに居なかった?」
言われたその言葉にドキリッとする。
もしかして花音と一緒に出掛けていたことがバレているのだろうか。でも本当にそれが広まっていたらもっと俺は色んな人に話しかけられると思うから、多分バレていないとは思うけど……。
そんなことを思いながら、三瓶に向かって口を開く。
「ああ。ちょっと出かけていたが」
俺がそう答えているうちに倉敷も俺の方へ寄ってきていた。興味津々といった様子だ。
「やっぱり!! しかも女の子と一緒だったでしょ! 恋人?」
「上林、女の子とデートしていたのか? 可愛い子か?」
三瓶も倉敷も俺が恋バナに興味を持っているようだ。女の子と口にしているということは、花音の顔までは見えていなかったということだろうか。
「……恋人ではないよ」
とりあえず花音の顔を彼らが見ていないことにほっとしながらも、俺はそう答える。
俺と花音は恋人ではない。花音は俺の声を気に入ったなんていって、俺の家に入り浸っているだけで、俺と花音は先輩と後輩でしかない。
「恋人じゃないの? 凄い仲よさそうだったのに。女の子の方の顔は見えなかったけど、手つないでいたでしょ? 邪魔しちゃ悪いかなって声はかけなかったけど、絶対恋人だと思ったのに」
……三瓶が声を掛けてこなくて良かった。
流石に花音があの天道花音だと悟られないような恰好をしていたとしても、流石に話せば花音だと発覚しただろうし。
それにしても三瓶はキラキラした目で俺の方を見ている。よっぽどそういう話に目がないのだろうか。
「へぇ、それだけ仲よさそうなのに付き合ってないって不思議だな」
「ねぇねぇ、どんな子? 恋人じゃなかったとしても、仲が良いのは確かなんでしょ?」
倉敷と三瓶がそう言いながら俺に問いかけてくる。
……どんな子か。学園の花音と、素の花音って大分違うから、ちょっと話しても花音だとはバレないだろうか。言い渋っていてもおかしい気もするしな。
「明るくて、一緒に居ると楽しい友人だよ」
「なんか、凄い優しい顔してる! ただの友人って嘘じゃない?」
「なんだ、上林は明るくて楽しい子が好きなのか?」
そんなことを言われたので、否定したが、三瓶と倉敷は何だか盛り上がっている。
「上林君ってあんまり人と仲よくしていないイメージだったから、びっくりだわ。それにしても明るくて楽しい子と、上林君がどんな会話しているのか想像つかないわ!」
「というか、上林って俺と同じ花音ちゃんのファンだから、花音ちゃんみたいな子が好みなのかと思ってた」
……俺が言っているのは、花音のことなのだが、やっぱり明るくて一緒に居て楽しいというのは、学園の花音には当てはまらないのだろう。
そういう聖女様ってイメージがついていて、方言が出ないようにって学園では花音は大人しくしているみたいだし。凛久さんもだけどこの兄妹って仲良くなるまでは実際にどんな性格なのか分からないからな。
隣のゆうきは、俺が話している“明るくて楽しい子”が花音であることが分かっているからか、面白そうに笑っている。
それからしばらく話していると、授業が始まる時間になって解散した。
それにしても花音とは最近たまに出かけているから、クラスメイトにも見られることもあるんだよなと改めて俺は思うのだった。
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