文化祭の後

 文化祭を終えた後、俺は家へと帰宅した。



 体育祭の時同様、打ち上げに誘われたけど家にさっさと帰宅することにした。ついでに凛久さんに何故敢えて花音に話しかけたのかも聞いておこうと思った。

 今日は文化祭で疲れたというのもあってお惣菜を買って帰ろうかと、スマホで連絡を入れれば、どうやら花音と凛久さんで料理を作るから買わなくて大丈夫らしい。劇で疲れているだろうに作ってくれるらしい。



 それなら明日、明後日の文化祭の振り替え休日分の材料だけを買って帰ることにした。

 俺が家にたどり着いた頃にはもうすでに花音と凛久さんは俺の家に来ていた。



「おかえり、きー君」

「おかえり、喜一」



 笑顔で二人が迎えてくれる。ドアを開けた瞬間、美味しそうなにおいが漂ってきていた。今日は鍋を準備していてくれたらしい。




「凛久さん、何でわざわざ花音に話しかけたんですか」

「花音は喜一と学園で話したそうにしていたからな。それにこうして喜一の家に花音が入り浸っている状況だし、そのうち花音と親しくしているというのがそのうちバレるかもしれないだろ。少しぐらい交流を持っているみたいにしてた方が今後、どうなろうとも良いことだろ」



 凛久さんにはそんな風に言われた。



 確かに何処から花音と親しくしているか悟られるか分からないし、少しぐらい接触していたほうがいいのかもしれない。と、そこまで考えて、最初に花音が家にやってきた頃は、そのうち花音は此処に来なくなるだろうなと思っていたのに、気づけば花音がいるのが当たり前になっていて――この後も花音が此処にいるのが当たり前と思っている自分に少し驚いた。



「ふふふ、私はきー君と学園で話して、凄く嬉しかったですよ。家でいつもきー君と一緒にいるから、学園できー君と話すのは不思議な気分だったけど、嬉しいなーって。きー君と顔見知りになれたわけだし、きー君と挨拶をするぐらいは出来るでしょ? 凄い嬉しい。お兄ちゃんありがとうー!!」



 というかこんなに喜んでいる花音を見ると、おこる気にもならない。



「ねーねー、きー君、お兄ちゃん、私の劇はどうでした? 凄い一生懸命やったんですけど」

「凄かった。花音は劇も凄いな。女優とかにもなれそうだ」

「流石、俺の花音だ。可愛すぎて俺は興奮した」

「んー、女優は面白そうだけどそこまで興味ないんですよね。というか、今も散々注目を浴びているからこれ以上目立ちたくありませんし、私の夢って好きな人のお嫁さんになることですもん」



 花音の夢は随分可愛い夢だった。



 もっと大きな夢でもあるのだろうかと思っていたらそんな夢で、花音は可愛い夢を持っているなとちょっと笑ってしまった。



「むー何で笑うんですか? ちなみにきー君の夢は何ですか?」

「んー、夢か……。まだ何になりたいとかはそんなにないな。でもゲームとか漫画は好きだから関わる仕事出来たら楽しいかなと思うけど」

「それはいいですね!!」



 花音は俺の言葉に、にこにこと笑ってそう言った。



 正直、そんなに何になりたいかというのはない。とりあえず大学に行って、卒業するまでにもっと決めていきたいとは思っているけど。漠然と考えるのは、好きなものに関わって仕事が出来たら――って思うけれど、例えば好きな事と関わって仕事をしなかったとしても、大切な人と過ごせる日々でも手に入れられてたらなんては思う。



「ちなみに凛久さんは何をしたいとかありますか?」

「俺もまだ考え中だな。色々やってみたいとはいうのはあるが、まだ考え中だ」



 凛久さんはソファに座ったままそう言った。



「ねーき―君、お腹すいてません? 鍋たべましょーよ、鍋。私はもうお腹すいてますから」

「ああ」



 花音はお腹がすいてたまらないらしく、そのまま鍋の準備をして三人で食事を取った。花音と凛久さんが良いしてくれていた鍋は美味しかった。少し寒くなってきたから鍋というのは余計に美味しく感じられた。





 ちなみに食事を取った後聞いたら、花音と凛久さんは今日は俺の家に泊る予定らしい。凛久さんは明日も大学があるから俺の家からそのまま大学に通うなどと言っていた。

 それで荷物が多かったようだ。明日の講義に使うものを持ってきていたようだった。

 

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