「空?どうしたの?」

「い、いやぁ…」


 わざとか?わざとやってんのかアリス!?必要以上に前屈みになって谷間を強調しやがって!!しかも水着の上からだから余計に…。クソッ!目が引きつけられる…!


「ははーん?空ってば何処に目を向けてるのかなぁ?」


 女というのは、自分にかけられている視線に気づくというものを何度か聞いた事がある。それなのか、アリスはジト目をしながらだが、なんだか嬉しそうにしながらそれを言った。


「う、るせぇ…!」


 自分でも自覚できるほど顔を赤くしながら、目を逸らした。


「し、仕方ねぇだろ…。いつまで経っても慣れないし…その…アリスは魅力的だし…」


「ふふっ、空なら良いよ。むしろもっと見る?」


「見ねぇよ!ほら!とっとと海行くぞ!」


 強引に話を逸らして、俺は海に行くための階段を下りる。その時後ろから、ギリギリ聞こえるか聞こえないかな声が聞こえる。


「見て良いのに…」


………

……


「うりゃ!!これなら…」

「ほっ!」

「うぇえっ!?なんでとっちゃうのぉ!?」


 海のど定番であるビーチバレー。俺とアリスはバドミントンの様にそれを2人で行っていた。さっきは俺がわざとアリスが打ちやすい様にボールを上に上げ、それを隙と見たアリスがスパイクを打ち込んだ。だけど、それを普通に取る。


(だんだんとコツが掴めてきたな。ってお?チャンス…!)


 コッチに帰って来そうなボールが、丁度打ちやすい場所に通ってきた。足場の悪い砂浜だから、遠慮などせずに全力で跳躍する。


「そ、空さん?て、手加減をして…」

「悪い、もう無理だわ」


 既にフルスイングの直前に入り、もう取り消す事が出来なくなっていた。そして、全力でボールをフルスイングしてぶっ叩く。

 ボンッ!!! という音と共に、ボールが砂浜に叩きつけられた。


「この怪力おバカ!!手加減してよ!」


「いや俺ビーチバレー経験ないから、手加減は…」


 自分でも思うが、俺は少し負けず嫌いなのだ。だから例えアリスにも負けたくはない。料理?料理だけは例外だ。アレは勝てる気しないもん。


「むぅ…!よーし…でも次は勝つぞー!」


「悪いが退散しとくぞアリス。次に控えてる人も居るからな…」


 そう言って俺は強引にビーチバレーの場所からアリスの背中を押して退散しようとするが、当然だが納得行ってないようだ。


「えぇ!?そんなぁ!空だけ勝ち逃げってずるいよ!!」


「仕方ないだろ…視線を感じろ…」


 集中しすぎて完全に忘れていた。ただでさえアリスはモデルも青ざめるほどの超美形で、スタイルもとんでもなく良い。

 そのスタイルを、持ったアリスが、飛び跳ね回るビーチバレーというものをやってみろ、胸が揺れる姿を見ようと変態共がワンサカやって来る。


「そ、そういうことね…」


 アリスは少し顔を赤くしながら自身の胸を隠して、砂浜を一緒に駆け抜ける。


「アリス、服を着ろ」

「えぇ…でもなぁ…これ…空に褒めてほしくて…」


 わっかりやすいくらいにショボンと落ち込むアリス。不謹慎だけど、くっっっそ可愛いなぁおい!その表情俺の心に刺さる!!


「ダメだ。俺以外にアリスの体は…あまり見られたく無い」


 俺もまだまだ子供ということだ。要するに独占欲。アリスを自分のものだけにしたいという欲望だった。


「そういうことなら…いいけど…」


 言葉ではトゲトゲしいが、ニンマリと笑って幸せそうにしているアリスには、説得力のかけらもなかった。

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