みなさん、節度をもって…節度?

「うおおぉ…すげぇな」


 俺とアリスが2人で考えた旅行計画の中にあった旅館にチェックインする事が出来、俺はその部屋の扉を開いた。ホテルとは少し違う落ち着いた雰囲気の日本家屋は、少し割高だが、その値段も納得のものであった。


「うおぉ!!凄いよ空!浴衣がある!!」


「おぉ、そうだな」


 そういやアリスはまだ浴衣を着た事が無かったな。風呂上りに着せてみたいものだ。

 と、考えていると、アリスは浴衣をじっくりと眺めていた。


「どうした?」


「いやぁ…帯が無いからさ、『あ〜れ〜!』『良いでは無いか〜!』って奴が出来ないなぁって」


「俺はどこの悪代官様だよ…」


 アリスはそんな事を夜に御所望だったらしく、それが出来ないのを知ると、わかりやすいほどにしょぼん、と落ち込んだ。


「安心しろ、浴衣姿のアリスとか可愛すぎるから、多分望む展開にはなると思うぞ」


「ホント!?」


 さっきの落ち込みは何処へやら、目を輝かせる嬉しさを出している。


「だけどまぁ、最後の最後の楽しみは最後まで取っておこう。まずは海に行ってアリスの水着姿を…ではなく、当初の目的であるきちんと海を楽しもう」


「そうだね。空の腹筋…じゃなくて、空とイチャイ…でもなくて、海を楽しもうか!」


 お互いにお互いの言った事は聞かなかった事にして、俺らは海に…は行かず、俺だけ部屋を出る。

 海の更衣室で着替えるより、旅館で着替えて下に水着を着た状態で行った方がいいからな。


(……今アリスが中で着替えてんのか…)


 もう既に何度も体を重ねた仲であるが…それでもだ。寧ろ体を重ねるたびに、アリスが愛おしく、よりめちゃくちゃにしたくなってしまう。

 だから、今俺が覗きたいと願うのも当然なことだった。


『うわっ、何この水着すっご…』


「っ…アリス、わざとだな?」


 俺がもんもんと考えてる時にピンポイントにそんな言葉を出しやがった。クソ、アリスのやつ、最近離れてても俺の考えてることが分かるようになってきたからって早速利用しやがって。


『ふふーん、だってこの水着を空に見せて…耐えられるかなぁ?って』


 壁越し体もわかるアリスのニヤついた笑み。流石の俺も外でやるなんてハードな事はしない…多分。

 いやでも、夜まで我慢してればいいのだ。


「ほい、空いたよ〜。じゃあ空も着替えてねー」


 部屋から首だけを出してコッチに手招きする。ドアを開けて入ろうとした俺だったが、突如強引に部屋の中に引っ張られて体勢を崩す。


「おっとと…なにすんだよアリ…」


 倒れる事を避けられた俺は、目の前のアリスを見た。そこには、派手な赤色で統一されたビキニを着て、いつもはロングに伸ばされた髪をポニーテールに結んだアリスの姿。


「なっ…」

「あ、あんま…ジロジロは見ないで…恥ずかしい」


 恥じらいを残して、髪をくるくると指で弄る。その仕草にグッと来るも、何とか欲望を堪えた。


「さ、最初は…やっぱ…好きな人に見てもらいたいから…」


 俺の頭の中のイメージは、火山が爆発したようなものだった。無意識のうちにアリスを抱きしめ、強く、強く抱きしめる。


「はぁ…やっぱアリスは世界一可愛いわ」

「むにゅぁっ…!ぐ、ぐるじぃ…!でもうれしぃ…」


 アリスと俺は10分ほど抱きしめあって居た。因みにその後は…何もなかった。いや本当にね?マジで何も無かったよ?

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