お買い物デート
「ねぇねぇ空!キャンプ行かない!?」
夏休みに入る最後の講義が終わると、アリスがそんな事を俺に持ちかけた。その類の雑誌も入れて。
「海か山か…どちらを選ぶも君次第…か」
海か山か、どちらが良いかと言われれば俺は海が良いな。山は虫が多くて少し苦手なのだ。それに…
(アリスの水着姿も見れるし…って!いかんいかん!何を考えてるんだ俺は!)
ナチュラルにそう考えてしまった俺は、直ぐに首を横に振る。だいぶアリスに毒されて来てしまっている様だ。
「空が良ければ…なんだけどさ、行かない…かなぁ?」
両手の指を絡ませて、上目遣いでそれを言ってくる。あざとい計算の行動じゃなく、マジの天然の行動だから責めることも出来ない。
「お、おう!行こうぜ!海!」
「海ね〜!了解であります!早速水着の新調しなきゃー!」
そう言ってアリスはウキウキ気分でスキップする。だけど、とある点が気になって思わず問いかける。
「アリス、水着は去年のがあったんじゃないか?」
去年隼也達と行った海では、中々エ…ゲフンゲフン。魅力的な水着を着ていたが、今年は着ないのだろうか。
「えぇっとねぇ…去年のはねぇ…」
コッチに近づいたアリスは、辺りを気にしながらちょいちょいと手招きをする。
そして俺は耳を傾けると、囁く様な声とともに真実を知ることとなる。
「じ、実はさ…あの水着…サイズが合わなくなっちゃって…」
嘘だろ? と言葉に出してしまう。流石にアリスの胸囲は知らないが、それでも推察する限りGはありそうなのだ。
だけどそれ以上にデカくなってる…ヤバイだろ。
「あ、あぁあ…そうか…じゃあ新しい水着は必要だな、うん」
「ととと、とかいってさぁ〜、空ってば顔赤いよ?何想像したのかなあ?」
「うっせ、お前も顔赤いんだよ!お互い様だろうが!」
どこかで『リア充死なねぇかなぁ…』という声が聞こえてくるが、ごめんなさいとしか言いようがなかった。
………
……
…
「なーんか2人で買い物なんて久々だね?」
「そう言えばそうだな」
俺とアリスはデパートの中を歩き回っていた。目的はアリスの水着の新調と、俺は適当な服を選ぼうと思いここに来たのだ。
「…っ…ぅっ…」
隣で歩いているアリスは、何故か俺をチラチラと見ながらも決して俺と視線を合わそうとしない。不思議に思った俺は一瞬だけアリスの全身を見ると、右手がソワソワと動いていた。
「はぁ…」
そういうことか、と察すると、アリスの手を絡めて、いわゆる恋人つなぎという奴をやる。
「しょ、しょら!?」
呂律が回って居ない状態で顔を真っ赤にしながらそう叫ぶ。
「ったく…やることやってんのにそういうとこは高校とは変わんねぇのな」
え?そこで?という場面で、アリスは余計な事を考えて行動をしなくなってしまう。だから俺がリードしてあげなくてはならないのだ。
「はぁ…」
こういったウブな反応を見せられると、思う存分にめちゃくちゃにしてしまいたくなる。そんな気持ちを知ってか知らずか、アリスは俺にひっついてきた。
「えへへぇ…空ぁ」
「な、なんだよ…」
「ふふ、なんでもなーい」
この後無事買い物を終えたアリスと俺だったが、そのあとどうなったのかは…いつも通りと言っておこう。
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