事件

「よいしょっと」


空との同棲を始めてから早3ヶ月が経ちます。アレから色々と忙しくなっています。私が家事全般を行い、空がバイトしてお金を稼ぐというやり方は、結構良かったらしく、ちょっとした喧嘩もなく、私達は幸せに暮らしていました。


「でも…これでいいのかな…?」


今私は、とても幸せだ。これ以上ないくらい。好きな人と一緒の大学に行けて、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て…一夜を過ごして…これ以上のものを貰ってしまったら、私は何で返したらいいのか分からなくなるくらい。


クリスマスで、どちらがより幸せにできるかの勝負。もう勝負は決まってるのに、空は私をより幸せにしてくれる。より依存させてくれる。


まるで麻薬の様な中毒性に、私は一生離れる事はできないと確信していた。


だけど…空から離れていってしまうかもしれない。


その理由は、最近空が出掛ける事が多くなった。もしかして…浮気。


「違う!空はそんなことしないもん!」


その言葉が出てきた瞬間、そういって頭から振り払おうとする。だけど振り払えば振り払うほど、それはどんどん強くなる。


「違う……空は…しないもん…」


絶対にしない。そう思ってる。信じてる。だけど心の奥底にある疑心が、湧き上がる感情を止めてくれない。


「ふぇぇ…」


半分涙が出ていたその時だった。玄関の扉が開く音がしてその数秒後、リビングの扉が開く。


「よぉアリス、ただい…って!?どうした!?何で泣いてる!?何かあったのか!?」


「そ、空ぁ…」


空が帰ってきた。それだけで安心感が出てきて、私は抱きついてしまった。


「ごめんね…空…私…空が浮気したんじゃないかって…疑っちゃった…」


「はぁ…!?あ…そ、そっか…最近お前に構ってなかったもんな…心配かけるのは当然だな。ごめん…」


そう言って空は私を抱きしめてくれた。


違う…違う。悪いのは全部私なんだ。


疑ってしまった私が全部悪かったのに。


「俺はお前を嫌いにならない。最近少し構ってやれなかったのは、その…ちょっとした理由があるんだよ…」


「理由…って…?」


「……その…あれだ…。俺…家事とか出来ねぇからさ…料理教室とか、家事全般のこととかを習ってたんだ。お前だけに迷惑かけるわけにはいかないし…」


そんな、空らしい理由に私は安堵した様な、納得した様な顔をした。


「まさか…それで私のこと構わなかったの?」


だけどそれと同時に、怒りが込み上げてくる。


「へ…へ?あ、アリスさん…?」


そうですか〜!私にこれは負担だと、そう言ってるんですねぇ空さんは!!へぇ〜そうですか!


「私は空から色っっっっんなもの貰ってるの!だから家事くらいは私がやる!寧ろ全部を返すには私もバイトする必要があるくらいなの!だから空がする事は私を構って癒してくれる事!本当ならそれだけで良いの!」


そう言って私は空を抱きしめる力を強くする。


「だから…今日は…もっと構いなさいよ…バカ」

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