第二弾・伝家の宝刀
「んっ…んぁ?」
俺は意識を覚醒させると、ベッドから起き上がる。隣にアリスがいないということは、既に料理を作ってくれているんだろう。
俺はリビングに向かうためにベッドから降り、ドアノブを開いてリビングに向かった。
「あ、おはよ〜空!」
「……………」
キッチンに立っていたのは、裸にエプロンを身につけているアリスの姿。それに思わず俺の頭はフリーズする。
「卵の賞味期限切れそうだったからちょっと多めのスクランブルエッグにしたから、いっぱい食べてね!」
まるで何も無いかの様にするアリス。そうか…これは…これは…ツッコミ待ちだな!なら俺は絶対に反応せんぞ!!
「おはよう。飯ありがとな…っと、アリス俺のスマホ知らね?」
ワザとだ。スマホは俺とアリスの部屋で充電してる。これにより反応してないぞとアピールが出来る。
「っ…うーん、分かんないなぁ。部屋に行けばわかるんじゃない?私も探してあげるよ!」
「おう。ありがとな。だけど今はアリスの料理が楽しみだから後にするよ」
すると、ワナワナと震え出す。
「…………もう!!良い加減我慢の限界だよ!!」
おっ、ついにアリスが我慢の限界を迎えた様だ。顔を真っ赤にして声を荒立てる。
「人が恥ずかしさ押し殺して日本の伝統文化やってるのに、なんでなんの反応もないのさ!」
誰だアリスに裸エプロンが日本の伝統文化と教えた奴は!!アレだな!今んところ高校の奴らしか思い浮かばねぇ!!!特に隼也や紅蓮辺りが怪しいな!!
「はぁ!?なんの反応も無いと思うなよコラ!こちとらお前の格好見た瞬間襲いそうになったわ!!もっと節度をわきまえやがれ!」
「へーんだ!!節度なんか気にせずに空のイチャイチャするのが同棲の目的なんだい!それより襲いそうになったの!?どう!?あと一押し!?」
グイグイと俺に近づいて目を輝かせる。
「近い近い近い!胸当たってるっつうの!それに昨日…」
「昨日…っ!?」
昨日の事を思い出す。だって俺らは…大学の講義を受けずに…ずっと…。
「そ、そそそ、空ってば何赤くなってんのかなぁ!?アレを思い出したくらいで顔を赤くするなんて、お子ちゃまだねぇ!」
「うるせぇ悪いか!!好きな女が…あんな姿になったら誰だって…」
「っ!?!?!?」
アリスは沸騰するんじゃ無いかと言う勢いで顔を赤らめ、「あわ、あわわわ」とつぶやいている。
そんなアリスがとてつもなく愛おしくて、俺は無意識のうちにキスをしてしまった。
………
……
…
「なぁなぁ和人ぉ、空の奴今日も来て無いな?」
「そうだな。あんな真面目な奴に限って…なんかあったか?」
俺は少し考える。空は結構真面目なのだ。授業もちゃんと受けるし、色んなところでキチキチしてる。だけどそんな奴が二日間も休みなのだ。
「…ん?ま…まさか…」
考えたくも無い予感に当たってしまう。それは…先々日見せた空の彼女である。あの文学部の女神とも謳われたアリス様もキャンパス内で見ていない。つまり…。
「空とアリス様…一緒にいる事って…ないよな?」
講師が喋る声しか響かないこの教室で、バキッ!!と何本のシャーペンそのものが折れる音が響く。
「あの野郎なんって羨ましい真似を!!」
「おい!!空の住所特定しろ!突撃すんぞ!」
「任せとけ!!特定なんて大の得意分野だ!!」
「でかした!よーしてめぇらぁ!!あの羨ましいクソ野郎をぶっ殺すぞ!!!」
『おおおおおおおおおお!!!!!』
これは非リア軍団達が、とある男に牙を剥くも、その近くにいる女神に呆気なく無力化されるまでの物語であった。
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