一夜明けて
「んっ…」
俺の意識は覚醒して、目を冷ます。いつもと違う光景に、今が卒業旅行の最中だという事を思い出した。それと同時に、昨夜の出来事も…。
「スゥ…スゥ…」
幸せそうに眠っているアリスの横顔に、俺はふ、と笑う。
「アリスさんや〜。そろそろ起きないと朝飯…っ」
そう言った途端俺の首に手が回され、強引にアリスの方に引っ張られる。顔が胸に埋まると、それを行なった張本人が告げる。
「えへへぇ、つっかまーえた」
「目ぇ覚めてたのかよ」
「うん。おはよ」
いつもと変わらぬ筈の笑みだったが、昨日の所為で何処か違うように思えた。
「アリス…お前なんか変わったか?」
「え?そうかなぁ。空に処女を貰ってもらったって事以外は特に何も変わらないよ?」
そこが主な原因だろうけどな…。だけどアリスに言われた所為で余計に昨日のことを意識してしまう。
「…あ〜…その…なんだ。これからもよろしくな」
一線を超えたからといって、俺がアリスに向ける感情は何一つ変わってない。だからその言葉を送る。
「うん!よろしく!」
アリスはなんら変わらぬ笑みを浮かべるのだった。
因みにちゃんと避妊はしてる。アリスが買ったゴムを使ったからな。
(ん?まさかアリスの奴…今回のことを見越して買ったのか?)
元々俺とやるつもりで買ったとしたら、かなり計算高い女である。まぁそんなアリスも可愛いがな。
………
……
…
「うっ、ううっ…歩きにくいよぉ…」
「だ、大丈夫か?」
アリスの肩を担いで歩くのを補助している。どうしてこうなったのかは昨日の夜に起きた出来事しか思い浮かばない。
「うん…ギリギリね。というか…空に密着してもらってるから平気平気でござるよ」
「嬉しい事言ってくれんじゃねぇかこの野郎」
そう言いつつ廊下を歩いた俺らは、朝食場所である食堂に到着する。
「おう空!アリスちゃん!ってあれぇ?どうした?」
トラブルメイカーの異名を持つ隼也がアリスを不審そうな目で見た後…
「ははーん」
何か答えにたどり着いたように笑みを浮かべ俺を肘で突っついてくる。
「お二人さん、昨日はお楽しみでしたね?」
「「っ!?」」
顔を赤くして動揺するのは俺だけじゃない、アリスも同じだ。その反応を見てケラケラと笑う。
「ぷぷぷぷぅっ、いやぁ2人がねぇ。良かった良かった」
「隼也、少しコッチ来いや」
首根っこを掴んで引きずり回す。
「あっ、ちょっ!ごめん!タンマタンマ!!」
「人の事情に首突っ込んで来て、覚悟は出来てるよなぁ?」
「いやぁ!!大魔王様の降臨じゃ!誰か俺を助け…へ?」
だが助けようとする奴らは皆無であり、誰しもが目を閉じるか目を逸らす。おいおい、人望ねぇなぁ隼也。
その後、涙目になった隼也が帰還したという。
おっと、暴力は振るってねぇよ?
………
……
…
「スゥ…スゥ…スゥ…」
京都の街を再び堪能した俺とアリスだったが、アリスは疲れて眠ってしまった。俺に頭を預けて、可愛い寝顔を無防備に晒す。
(ぁぁああああぁあぁもうっ!!可愛すぎんだろど畜生がぁああああ!!!)
アレ以来本気の本当に歯止めが効かなくなりかけてる。アリスの事を考えたい。考えたいのだが自分の欲望を優先してしまいそうなのである。
「んっ…んんぅっ…空…大好き…」
「……」
もう我慢ならない。コイツは俺が普段どれだけ我慢してるか分かってなさすぎる。
アリスの横腹に手を回して、体を引き寄せる事で体が倒れ、強制的に膝枕を実行する。
「……俺もだ。愛してる。アリス」
寝ているだろうが俺は、その言葉を無意識に出した。
………
……
…
(ふぇあ!?何何!?空…さっきなんて言った!?私のこと…あ、愛してるって…)
私はついさっき起きた直後、空に告白紛いのことをされた。
(んんっ!ヤバイよぉ〜!顔のニヤケが止まらない!戻って私の顔ぉ〜!!)
私は空の知らないところで、思いっきり奮闘するのだった。
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