おや?アリスちゃんの様子が…
「んんっ!抹茶わらび餅美味し〜!!空空!はい!あーん!」
「んぐっ!」
有無を言わさず口に放り込まれたわらび餅。モチモチとした食感が口の中に広がり、抹茶の風味がいい感じにマッチしててすげぇ美味い。
「美味しいでしょ〜?」
「そうだな。それよりアリス…それは狙ったのか?」
一度俺の口が付いた爪楊枝で抹茶わらび餅を指して、再びそれを口は運ぼうとするアリスだったが、何処か急いでいる様子だった。そこから導き出される答えは1つ。俺に気づかれない間接キスをしようとしてた訳だ。
「うっ…ば、バレちゃあ仕方ない…けど!!」
その爪楊枝を自分の口に運び、抹茶わらび餅を飲み込んだ後に俺を指差した。
「へっへーんだ!!これでもう間接キスしちゃったもんね!!」
「別に悪いとは言ってねぇんだが…むしろ俺もアリスと間接キス出来てオールオッケーだ」
「な、なぬ!?と、ということは……私が食べて空が食べてを繰り返したら…永遠に間接キスになる?」
そこに気がつくとはアリスは天才の様だ。
「そうだな。その為にも抹茶わらび餅を沢山買おう」
「おーいお二人さんや?俺らがいることも忘れてはおらんかね?」
後方に付いてきた椎名と隼也の2人。椎名はパンフを見て目を輝かせているが、どうしたんだろうか。
「隼也!空!アリス!後10分で時代劇の撮影を疑似体験できるみたいだから行くわよ!!」
いつにも増して熱狂的な椎名に、俺とアリスは目を丸くしたが、隼也だけは冷静できちんと俺たちに説明をしてくれる。
「椎名は時代オタクでな、悪いけど付き合ってくんねぇか?こういうと聞かねぇんだよ」
別に断る理由もないし、俺もそれはやってみたい。
「良いぞ」
「私も行く〜!!時代劇とか生で見てみたいもん!!」
………
……
…
「ざっけんじゃねぇ…なんでこんなことになってんだよ…」
「知るか…!文句なら椎名に言いやがれ…!!」
俺と隼也は制服ではなく、時代劇にありそうな着物を着こなして、模擬の刀で偽の斬り合いをさせられていた。これも全ては…『体験出来るんだって!隼也!空!行って来なさいよ!!』という椎名のワガママであった。
「隼也〜!カッコいいよ〜!」
「なっ!?し、椎名!バカじゃねぇの!?」
普段はおちゃらけた様子の隼也が顔を赤くして動揺している。その姿に思わず俺はニヤケてしまう。
「てんめぇ空!!ニヤニヤしてんじゃねぇぞコラ!!」
「いやぁ…ね?普段は俺とアリスの事イジリ倒してくるくせに…お前も案外ウブなんだなぁと」
みるみるうちに顔は赤くなり、今にも本気の斬り合いが始まりそうになっていた。
「こんの…!アリスちゃん!空の事褒めて褒めて褒めまくってやれ!!」
「なっ!?」
咄嗟にアリスに目を向けると、ニヤリと笑って了解!!という顔をしていた。
「空はイケメンで運動神経抜群で勉強もできてハイスペック!なのに家に帰ったら超デレデレしてくれるとか可愛すぎるんですけど〜!!」
「分かった!!分かったからアリス!!少し黙ってくれねぇかな!?」
今度は俺の顔が赤くなり、それを言ったアリスも何故か顔を赤くした。
「ニヤニヤすんな隼也テメェ!!」
………
……
…
「ひ、酷いめにあった…」
「あははは!でも面白かった〜!」
俺とアリスが回りたい所と隼也達が見たいところが別々になり、別行動を取っているので今は2人っきりだ。
因みに俺らが向かったのは、有名な京都名物土産店だ。父ちゃんからあぶらとり紙買ってきてと言われてるからな。
そして店内に入って数分、俺はもう買い物を済ませたが、アリスはまだ終わってない様だけど…なんだ?凄い周りをチラチラしてるみたいだけど。
「アリス、お前は何買うんだ?」
「ひゃっ!?」
咄嗟になにかを後ろに隠したのを見逃す俺ではない。そして隠されれば隠されるほど見たくなるのが俺である。
「何買ったんだよ〜アリス。見せてくれよ」
「あ、あわわ…ふ、普通のおみあげだよ!」
漫画の様によそを向く。こいつ…俺に対しての嘘が下手すぎる。こうなりゃ奥の手だ。
「お?彼処にキスすれば願いが叶う神社ってのがあるんだが」
「え!?どこどこ!?空!早速そこ…あ…」
その隙に俺はアリスの後ろにあったものを奪い取る。それは小さな箱だったが…何々?
「やぁあぁああ!!ダメェ!!」
0.01ミリ。極薄コンドー
その時点で俺は何かを察し、怒号を放つ。
「ゴムじゃねぇか!!何考えてんだ!!!」
「ふ、ふふふふーん!!そ、空がお風呂上がりの私を襲うかもしれないからその予防?ってやつだね!」
確かにアリスは美人だ。そこらのモデルなんか軽く超えてるレベルで美人だ。だがだからといって、アリスの合意もなしに襲うなんて事ありえない。
「ったく…何考えてんだよお前……とりあえずこれは買いません」
「ぇえ〜!?」
「ほら、とっとと決めろよ?」
だがのちにの俺は、この時アリスの行動を最後まで見ておく事を、後悔すると共に、喜びもするのであった。
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