マラソン大会

「ではこれより、マラソン大会を開始する!!」


田中先生が壇上に立ってそれを宣言すると、生徒達の反応はかなり様々なものだが、大多数が


「嫌だぁああああ!!!」

「死にたくなぃぃいいいいい!!」

「先生…母が危篤です」

「父ちゃん…俺生きて帰るよ…」


という、まさに阿鼻叫喚の絵面だった。ヤバすぎるだろ。たかがマラソン大会なのにまるで戦争に行く前みたいじゃないか。


「というか…なんでアリスはジャージなんだ?」


今日はそこまで寒くない筈だ。しかもこれから走るというわけなのに…。


「あーこれね?だってジャージ脱ぐとさ」


ジャージを脱いで体操着を俺に見せると、今まで抑えていたかのような豊満な胸が突き出される。


「ほら。これが揺れると男子の目に入っちゃうんだ〜。私空以外に告白されるのもごめんだし、空以外にこれを見せようとは思わないから」


「あ、アリス…」


本当に俺に一途なんだな…と思ったが、さっき一瞬毒を吐いたと思ったのは気のせいだろうか。


「だ〜か〜ら、えい!」


「ぁっ!?」


胸を押しつけるように腕に抱きついたりアリスは、いたずらじみた笑みを浮かべる。


「空にならどんなことをされてもいいよ?」


「……ふぅ…」


深く深呼吸をして落ち着きを取り戻し、アリスの肩を掴む。


「アリス。学校じゃそういうのは禁止。理由は以前にも説明したな?」


「あ…」


気がついたように目を点にして、この数秒後、しょんぼりとした表情を浮かべる。


「ご、ごめ…」


「謝るな。だけど帰ったら、覚悟しとけよ」


「え…うん!!分かった!!」


側から見れば、俺の言った言葉は確実に帰った後喧嘩するように見える。だけど俺は帰ったら、アリスと心ゆくまでイチャつくだけである。


「よし…」


さっきのでエンジンがかかったからな。一位フィニッシュ決めてやる。


「ヤベェぞオメェら!空の目がガチだ!」

「はぁ!?もしかして一位狙うのかよ!?」

「ヤベェ!運動部の俺らが負けるのはヤバイ!!」

「なにぃ!?あの何故か勉強も出来て運動力ゴリラの空が!?」

「あのサッカー以外のジャンルはまるでゴミの空が本気を出すのか!?」


俺の後方から酷い声がバンバン飛んでくる。振り返って拳を握る。


「お前ら言い過ぎだろ!?後最後のは誰だ!!ぶっとばしてやらぁ!!!」


「「「「隼也です」」」」


「はぁ!?ちょっ…!!お前ら俺の事裏切るのか!!見損なっ…あ…そ、空さん?これには深いわけがあ…う…うわぁあああああああああああ!!!」


………

……


マラソン大会始まり。全部で10キロの道のりを走り、一位の選手には表彰状が贈られる。まぁそれが欲しいという生徒はあんまり居ないだろう。それは俺も例外じゃない。だけど男子達にとっては、女子にアピールできる絶好のチャンスだ。

まぁ俺がアピールをしたいのはアリスなんだけどな。


「空さん!?ちょっとペース早くないですかね!?」


「うるせぇぞ隼也。文句あるならとっとと下がれ」


そういうのは久々登場のアキラサッカー馬鹿である。


「うるへぇ!!こっちはオメェミテェな体力馬鹿じゃねぇんだよ!!というか…なんでアリスちゃんと椎名も平然とついて来てんの!?」


先頭集団は俺ら5人だ。俺らもまだまだ余裕がありながら走る。隼也も何だかんだ言ってるが汗の一滴もかいてないし、息も荒れてない。


「隼也、お前知らねぇのか?スポーツテストでこいつらツートップだぞ」


「嘘だ!?椎名は兎も角アリスちゃんまで!?」


本当だ。アリスも椎名も共にAで、運動神経が悪いわけじゃない。というか…。


「おいテメェ、さっきアリス馬鹿にしたか?もっぺんアレくらいてぇのかコラ」


「ごめんなさい!!もうバックドロップとパイルドライバーの連携だけは勘弁してください!!」


そう言いながらも、俺らはどんどん先に進んでいく。後続も俺らに追いつこうとしているのかペースを上げようとするが、かなり引き離されていて追いつくのは無理に近い。


「さてと…アリス。ペース上げて一位取ってくるからお前は自分のペースで走れよ?」


そう言い残して、俺はペースをもう二段ほど上げて加速して走り出す。


「うん!分かった〜!いってらっしゃーい!気をつけてー!」


結果は


一位俺

二位アキラ

三位隼也

四位椎名

五位アリス


という結果に終わった。

結構あっけなかったような気がする。

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