空は逃げる事が出来ない
「見て見て空!!スタバって凄いね!!」
「すっげぇな。初めて見るわ」
俺らの近所で新しく出来たスターバックサコーヒー。オープンから1ヶ月後、アリスの提案から俺もついていくことになった。
「アレ?空ってカフェとか来たことない?」
「まぁな。俺はカフェって柄じゃないだろ」
「あはは!確かに!空にはグラウンドが似合ってるよ!」
褒められてるんだか貶されてるんだか分からないな。まぁ兎に角、俺はこんなシャレオツな場所になんか一回も来た事がない。内心かなり緊張している。
「じゃっ、入ろ入ろ〜!!」
元気よくそう告げて、アリスは俺の腕に身を預けてくる。これは…カップルみたいじゃないか!
「な、なんだこれ!?普通のカップルみたいじゃねぇか!!」
アリスが普通のカップルのことをするなんてありえない!!
「カップルだよ!?あ…でもやばい…最近は治まってきたけどやっぱり空の体に触れると発情する…」
「よーし!それでこそいつものアリスだ!」
いやぁ良かった良かった。普通のカップルのすることでアリスが満足するわけがないからな。少し偽物かと疑ったぞ………ん?アレ?俺なんかおかしくねぇか?まぁ気のせいだろ。
「おぉっ!中凄い!オシャレだよ空!!」
いち早く店内に入ったアリスが興奮気味に告げる。確かに中はオシャレな雰囲気で囲まれてるし、女子高生とかも多い。
「そうだな。でも少し静かにしようぜ。えぇっと…」
俺らはカウンターに行ってメニューに目を通す。うっわ、なんじゃこりゃ。コーヒー一杯500円って、高くね?しかも内容量少ないし…。
「空はどれにする!?私はキャラメルフラペチーノ!!」
「な、なんだそれ…美味いのか?」
こういうことに関しての知識はおじいちゃん並みの俺は、とりあえずアリスと同じものを注文した。
数分後それが出て来ると、二人一席の場所に座り、お互いに味を楽しみ、カバンの中からテキストとノートを開く。
そろそろ本格的な受験勉強が必要になってくるからな。今は最後の追い込み時期だし、まじめにやっておいて損は無いだろう。アリスもテキストを開き、苦手な古文を克服していく。
「アレ…えっと…空、これってどういう意味だっけ?」
「あぁ…これか。これは…」
俺が声を出そうとした瞬間、とある女の声が店内に響き渡る。するとどうだろうか。頭はフリーズし、腕はピクリとも動かなくなる。
「つーかさぁ、ぶっちゃけ勉強なんてひつようないっしょ?」
「わかるわ〜!今を大事にしてきたいよね!」
「まぁどうせ親がなんとかしてくれるっしょ!」
下品な声には確かに嫌悪感を抱く。だがそれとは全く違う感情。どうして、なぜといった感情が俺を支配する。
「空、大丈夫?」
「っ…」
我に帰った俺はアリスの問いかけにようやく答える事が出来た。頭は冷静じゃ無い。だが我に帰れたのはアリスのおかげだ。
「あぁ悪いアリス。少し…な」
「あっれぇ!?誰かと思えば、空!?ひっさしぶりジャーン!!私のこと覚えてる!?」
アリスのような天然では無く、金色に染めたと思わしき髪。少なくとも中学はそんな髪色じゃなかったしな。
にしても、最悪だ。
マジで最悪だ。
バレちまった以上もう言い訳も出来ねぇし、ここで騒がれんのも面倒だし、とっとと話をつけてしまおう。
「久し振りだな山西…。出来れば二度と会いたくなかったよ」
中学の俺を狂わせた元凶とも言える女、山西愛が、俺の隣に立った。
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