進路相談

目の前には中間テストの順位が張り出されている。多くの学生がそれを見る。それは俺とアリス、そして椎名や隼也も例外じゃない。


「おぉ23位!!10位も上がったぜ!!椎名はどうだ?」


「あっ!私も18位!ねぇねぇ、空はどうだった?」


2人が聞くと、俺達はとある方角を指差した。そこには、俺は学年4位に食い込み、椎名は6位に入っている。


「嘘だぁ!!椎名はともかくなんでお前がそんな勉強出来るんだよ!!」


「サッカーで上手くなるにはまず頭を鍛えるんだよ」


というわけで中学時代死に物狂いで勉強した俺は、頭は良く、運動もできるハイスペック男子になったのだ。


「この野郎〜!アリスちゃんもなんとか言ってあげ…」


「流石空!学年4位なんて凄いよ!!」


「いや、アリスが英語教えてくれたからじゃねぇか。感謝してるよ」


「えへへぇ」


アリスの頭を撫でると、幸せそうに顔をニヤケさせる。はぁ…かわいい。抱きしめたい。


「はっはっは!仲良いなぁお前らは」


そう言うのは近くにいた田中先生だ。すると、全体じゃなく俺1人に目を向ける。


「空、少し良いか?話があるんだが」


「え…まぁ良いっすけど、俺なんかやらかしました?」


何処かの無自覚系主人公じゃない。割とマジで何をやらかしたかわからない。


「いや、そういうんじゃねぇんだ。取り敢えず少し来てくれ」


………

……


「空、お前の行き先の大学、もうワンランクあげてみないか?」


進路相談室に呼び出され、突如そんなことを言われる。俺が志望する大学は、偏差値60超えの私立大学だ。

だけど田中先生が提示したのは、日本屈指の超難関国立大学だ。


「これって…」


「うちの学校の成績は現段階で69。結構な進学校だ。その中でトップの成績を収める奴はこの大学にもいける。歴代の卒業生が良い例だ」


たしかにウチからあの大学に行くのは結構聞いている。だけど…。


「いえ…俺が行きたいのは、あくまでアリスと一緒になんで」


俺がその大学を志望するのは、アリスと一緒じゃなければ嫌だ。そんな子供みたいな理由だ。この大学ならアリスも入ることが出来る。

だけど…アリスは帰国子女な為か国語があまり出来ない。最近挽回してきているが、受験まで後3ヶ月を切ってる。時間が無い。

幾ら頭のいい大学を出て将来を安泰に暮らそうと、アリスと一緒に4年間を過ごせないのは嫌だ。


「……分かった。ならこっちも考えとくわ。悪かったな。急に呼び出して」


「いえ、構いません」


俺はそう言葉を後にして、進路室を出て行った。

だが俺の脳内で過ぎる『進路』まだ将来の夢を決めているわけでも無い俺は、自分が何をしたいのか、何をやりたいのかがまるでわからない。


「あ…」


医者。数々の脳内に巡らせていたもので、唯一俺がやりたい…と少しだけ思ったものだ。

親父がやってるから…という理由だろうか。何故かはわからない。だけど…なんとかなくやってみたい。


「ったく…舐めるのも大概にしろって…」


医者になれるのなんてほんの一握りだ。自分でそう言い訳をして、俺は教室に戻るのだった。

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