ライバル登場?いえいえ、相手にもなりません

「ねぇアリスさん、僕まだこの学校の中分からないからさ、もし良かったらこの中を案内してもらえないかな?」


「別に…良いけど」


アリスは基本的にお人好しだ。優しい性格を持ってるから頼まれれば断れないのは当然だ。だけど…。


(気に入らねぇ…)


分かりやすくこの感情を言うなら『嫉妬』だ。アリスを信用してないわけじゃない。だけど、それでも…心に靄が残ってしまう自分に苛立ちを覚える。


「はぁ…」


俺は心の何処かで、アリスが離れていってしまうんじゃないかと思ってしまっている。そんな自分が嫌だった。


「くそっ…」


俺は苛立ちを覚えながら、教室の外に出てすぐにある自販機で飲料を購入する。

スポドリを喉に流し込み、気持ちを冷静にさせようとする。


「……ん?」


「やぁ」


今1番会いたくない転校生が横に来て、ジュースを購入するために金を投入していく。


「アリスさんから聞いたよ。空君って、アリスさんの彼氏なんだって?」


「……そうだけど、何?」


どうしてもこいつのことは好きになれない。第一印象が最悪…ではないにしろあんまり良いイメージが無い。


「アリスさんさんはやがて僕が手に入れるから、覚悟しておいたほうがいいよ」


「…それはあいつが決めることだろ。テメェが勝手に決めてんじゃねぇぞ」


苛立ちを含んだ事により若干口調が荒くなる。


「残念だけど、アリスは僕のものにする。1週間も経てば、向こうから振り向いてくるようになるさ」


そう言って飲料を片手に、転校生は教室に戻っていくのだった。


………

……


「ん、んちゅ、んっ」


どうしてこうなった?

家に帰ってソファで寝転がっていたら、突如アリスが襲いかかって俺の唇を奪い、ディープキスを行う。かれこれ1分はずっとこうしてる。


「っ…ぷはぁっ!」


唇を離し、アリスは荒くした息を整える。肺活量的には俺の方が断然上だった為、余裕に言葉を出す。


「なんだよアリス…いきなり」


「私、空以外に興味ないってこと、分かってくれた?」


やっぱり、俺が嫉妬してたのを分かっていたようだ。アリスには敵う気がしないな。


「例え転校生が世界一のイケメンで、金持ちで、性格が良い人が私に惚れても、私は天秤にかけるまでもなく空を選ぶよ」


「……ありがとな…」


自然と出たその言葉は、まぎれもない本心だ。俺の気持ちを勝手に理解して、俺が1番やってほしかった事をやってくれる。ほんと、良い女すぎる。


「だから…上書きしてよ。さっきの転校生の分、空が」


「……了解」


理性のたかが半分外れた俺は、ソファから起き上がってアリスと対面する。キョトンとしているアリスの唇を強引に奪って、抱きしめる。


「んぐっ!」


顔を真っ赤にさせたアリスの熱が俺に伝わってくる。体温は一気に上昇し、気絶するかと思えた。

だが、俺を抱きしめて、舌を絡ませてくる。


「空ぁ…好き…好き…」


もうちょっとでR18指定が入りそうなほどの妖艶な声を出し、愛を囁いてくる。だがそれは、刺激するエネルギーにしかならない。

そして、母さんが帰ってくるまでの2時間、俺はずっとアリスを抱きしめ、抱きしめられ、何度もキスを行うのだった。

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