転校生の狙いはアリス!?

アメリカから帰還した俺とアリスは、シルバーウィークも終えた事で学校に向かった。

いつものように教室の中に入ると、『転校生』という単語が辺りを飛び交っていた。


「よう空。今日は転校生が来るらしいぞ。楽しみだな」


背後からアキラの声が語りかける。それに俺は目を見開いて驚いた。


「アキラ…お前…サッカー以外で興味を持ってんのか!?なんだ!?熱でもあるのか!?」


アキラがサッカー以外に興味持つなんてありえない!!絶対なんか病気になってるぞこいつ!!


「あ?ちげぇよ。そいつ、全国ベスト16のエースだった奴だからな。今のうちに目ぇ付けてんだ」


「あ、あぁ…なるほど…そういうことね。ん?って事は転校生は男?」


「あぁ、そうだな」


アキラから情報を貰いながら席に座る。

そして隼也や同じサッカー部のメンバーと駄弁っていると、時間が過ぎ、ホームルームの時間帯となった。


「ほーいお前ら〜席に付け〜。今日は転校生を紹介するからな〜」


全員気になっているのか、今か今かと待ち望んでいるようにソワソワしている。俺も少しだけ気になっていたが、アリスは全く興味が無さそうに俺を見てニヤけて居る。


「ふへへへぇ…空の横顔…じゅるり」


うん、平常運転だな。そう考えて居るうちに紹介が進み、先生が「入ってくれ」と一声放つ。

拍手と共に入ってきた青年はとんでもないイケメンであった。


「おぉ…すっげ…」


モデル顔負けの男なら紅蓮だ。それと同じくらいのイケメンだが、ジャンルが違う。アイツは荒々しい狼みたいな奴だが、転校生はエルフみたいな美形だった。


『キャァァァァ!!!』


女子の歓声で、アリスの体がビクッ!!と跳ねる。小動物みたいで可愛いな。


「先程紹介に預かりました、西園寺陽介です。得意な事はスポーツ全般です。よろしくお願いします」


薄い金色の髪を持ち、さわやかな笑顔をクラス中に広げる。女子の歓声、男子の嫉妬を浴びながら転校生が向かったのは、アリスの席。


「……ん?何?」


俺も少し不穏な物を感じながら2人の様子を見ると、転校生がアリスに問いかける。


「僕の事、覚えてない?」


座っているアリスに上から語りかけるのは野暮かと思ったのか、かがんでアリスと同じ目線に立つ。


「……うーん…ごめん。わかんない」


「そっか…まぁいいや。君のことは、これから堕としていくから」


「…へ?」


意味が分からない。そういった顔を浮かべるアリス。実は俺もよくわからない。


「ね、ねぇ…どういうことかな?」


「君に一目惚れした。僕と付き合ってもらうよ」


『はぁ!?』という声がクラス中に響く。俺はというと…。


「………」


放心状態。気が抜けていた。

だが直ぐにその気を取り戻し、転校生に語りかける。


「あ、あのさぁ西園寺君。いきなり来てそういうこというのは……ちょっとダメなんじゃない?」


「…これは僕と彼女の問題だ。部外者は口を挟まないでくれ」


正直…イラッと来た。部外者じゃない。彼氏だと言いたかったが、転校生はアリスに言葉を出して声を遮られる。


「で、どう?返事は」


「ごめん無理」


「ブフッ!!」


思わず吹き出してしまった。告白で無理って断られる奴初めて見たから仕方ないよね。


「な、何故だ?」


「だって私彼氏居るし、その人の事好きすぎて今も心臓破裂しそうなんだもん。他の男の人のことは、ちょっと考えられないかなぁ」


そう言って、アリスが苦笑いを浮かべると、教室が未だ嘗て無い奇妙な空気に包まれるのだった。

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