アメリカでの夜
「では、空君と我が娘アリスが婚約する事を祝って、かんぱーい!!」
「「「かんぱーい」」」
リオンさんの合図に乗り、俺、アリス、ソフィアさんが乾杯する。
「ねぇなんで結婚が前提なの!?普通付き合ったことに乾杯じゃねぇの!?」
ジークがツッコミを入れる。まぁ確かにその通りだが、俺ももう意思証明はしてるし、アリスは言わずとも、そしてアリスの両親に俺が結婚を考えてるって事を何気なく伝えたら、頭を下げられてお願いしますと真剣に頼まれた程だった。
「まぁまぁジーク、落ち着きなさい。それより空君とアリスは3時くらいに買い食いしてたらしいけど、大丈夫?食べれる?」
ソフィアさんがそれを告げるが、俺の腹はもう空腹で限界を迎えようとしていた。
「大丈夫です。もう消化しきって腹が減りまくってますし、出された料理を残す人間じゃないんで」
「あら、出来てるわね。アリス、貴女も空君を見習ってちゃんとピーマン食べ…おぉ、ちゃんと食べてるわね。日本にいる間にどんな変化かしら」
アリスのピーマン、ニンジン、トマト、嫌いの三種の神器はとっくに克服済みだ。その理由は……。
「ふふーん、最初は嫌だったんだけどね、空の手が触れた食材を合法的に口の中に放りこめるとなれば話が別だよ!」
「な、なるほど…それで克服したと」
ピーマン料理を作って定期的に出すだけ。あとはアリスが言った理由で克服していくだけだ。
「そういうことなのだー!」
とまぁ、その夜はかなり賑やかになるのだった。
………
……
…
「んんむ、むにゃむにゃ…しゅぴー」
「ね、寝てんだよな…?」
漫画でありそうな寝息を立てるアリスを尻目に、俺はベットから立ち上がる。トイレに行こうと部屋の扉を開けて、一階の階段を降りると、リビングの灯りがついていた。
「……リオンさん…?」
無意識のうちに声を出してしまった。
テーブルに座ってワインを飲むリオンさんの目は、何処か寂しそうだった。
「ん…おぉ、空君か。どうしたこんな夜中に」
「あぁ、少しトイレをお借りしたいと思いまして。良いですか?」
「うん。あぁそうだ。少し君と一対一で話しをしたいと思ってたんだ。ちょっと良いかな?」
「…はい」
特に断る理由もないので、リビングに入って椅子に座り、リオンさんと対面するような体勢で話しをする。
「「……」」
だがお互い何か話題が出るわけでも無く、1分程沈黙が続く。
最初に口を開いたのはリオンさん。小さく咳払いをして言葉を出す。
「アリスは…学校ではどうかね」
「……俺の前ではかなり元気です。ですが、俺以外の前だとどうしても一線を引いてしまう傾向がありますね…」
それは昔のトラウマからの防衛本能だろう。それを悪いとも思わないし、仕方のないことだ。
「君が死にかけてまでアリスを救った話は聞いている。私はそれがとても嬉しかった。空君になら、娘を預けられる。いや、預けたいと思える程にね」
「……」
「だけど、それと同時に怖くもある。君はもしも、アリスが助かり自分が死ぬという選択で、間違いなくアリスが助かる道を選択するだろう。となれば、アリスはまた孤独となる。それが一番怖い」
一度俺という麻薬を知ってしまったアリスは、俺がないと生きられない体になってしまった。無くなれば呆気なく壊れる。それが一番怖いのは当然であった。
「だから頼む。アリスと一緒に…生きてくれ」
「……はい」
リオンさんは頭を下げて俺に頼み込む。
俺はそれにイエスと返すしか無かった。
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