過去との決別
「うーん!やっぱりここのハンバーガーはいつ食べても美味しいね〜!!」
昼過ぎて、3時に差し掛かるこの時間帯、俺はアリスに地元を紹介されていたはずなんだが…いつのまにか食べ歩きを始めていた。
だけど、トリプルチーズバーガーとか…そんな胃袋の負担がやばすぎるもん食っていいんだろうか。
「そんな高カロリーなもん食っていいのか?太…」
太る、そう言いかけたが女子にこの言葉は禁句だと隼也に教えられた為辞めておく。
「大丈夫だよ〜、私太んない体質だから」
「おぉ、そりゃすげぇ」
全女子の憧れである太らない体質は凄いと感心する。因みに俺も同じなんだが…基礎代謝がいいんだろうか。知らんけど。
「えへへ」
アリスは俺に擦り寄って猫のように甘え始める。昔なら顔を赤くして辞めさせたが、今は嬉しく思うしそんなに動揺もしない。
「どうしたよ急に」
「いやぁね、あの頃は外に出るなんてすっごい怖くて嫌だったんだけど、空と一緒にいたら吹っ飛んじゃったからさ。ホント……空がいてくれて良かったよ」
若干恥ずかしがるようにそれを言うアリスに、らしくなさを感じる。
「なんかお前らしくないな…」
「だから…捨てないでね?」
キュッ、と俺の服の裾を掴む。その手は若干震えている。その手を強く握り、アリスと顔を合わせる。
「捨てねぇよ。死ぬまで」
アリスにとって俺は麻薬に近い存在だ。いや、麻薬よりもタチが悪いかもしれないものだ。俺が居なくなれば、アリスは間違いなく壊れてしまうほどに。
「つかお前、ヤンデレ属性もあるんだな」
少し前から片鱗を見せていた気がするが、今日で確信した。こいつ幼馴染属性も含んでる癖にヤンデレ属性もあるとかとんでもないレア種族なんじゃないか?
「ヤンデレじゃないよ〜!空が居ないと死んじゃうだけだもん!」
「それを世間一般でヤンデレと言うんですがねぇ。ま、俺もアリスに少し依存してる部分はあるけどな」
そう言いながらハンバーガーを食べ終えて、ゴミ箱にゴミ袋を投下する。
その時だった。
「アリス?アリスだよな?お前」
背後から突如声を掛けられた。背後を振り向くと、そこに居たのは4人組の男女。ラグビー部みたいな体格を持つ男も居れば、綺麗な美女も居た。
だけど、何故だろうか。こいつらのことは…嫌いだ。
「アリス…誰だこいつら」
アリスは動揺の頂点に達した瞳を閉じて、深く深呼吸をして再び目を開く。
「ふぅ、アメリカの同級生だよ。もう二度と会いたくなかったけどね」
「何?アンタ男の前だからって何強がってんの?」
俺がそれに口を挟もうとした時、アリスは俺の背中をぽん、と叩いて、その言葉を放った女子に向かって告げた。
「強がってるわけじゃない。ずっとアンタらの事が気に入らなかったから本音をぶちまけてるだけ」
「アンタ…最近会ってないから調子乗ってんじゃないの?また痛い目会いたいの?」
「やれるもんならやってみなさいよ。ジャック達の力なんて借りてないで、アンタの力でさ」
俺と居る時とは真反対の冷徹な瞳。不謹慎だが、俺はそれに思わず見惚れてしまう。
「くっ…」
「出来ないよね?アンタ1人でそれができる覚悟持ってる人間じゃないもん。結局、群れでしか威張れないチッポケな人間だもんね」
「うっ…うっさい…アンタなんか…アンタなんか…」
「まぁこれ以上虐めるのは辞めるよ。これ以上やったら私もアンタと同類になっちゃうし、正直アンタ達に興味ないもん」
そういった時、アリスは俺の腕に身を絡ませてくる。
「私の興味はずっとこの人だから。じゃ。またね。もう二度と会いたくないよ」
満面の笑みを浮かべて、俺はアリスに引っ張られるように道を歩き始め、隠れるように路地裏に入った。
「はぁ…はぁ…ふぅ…緊張した〜」
額に浮かべている一筋の汗。相当緊張したんだろう。ポケットにあったハンカチを取り出して差し出す。
「よく頑張ったなアリス」
「ありがと…空のお陰だよ」
「俺の?俺なんもしてないだろ」
「いや…空が居なかったら、私あんなに強気で居られなかったし、空と出会わなかったら、もっと無理だった。ホント…空は私の英雄だよ」
「美化しすぎだ。俺はお前が思ってるほど出来た人間じゃない」
流石に言い過ぎだと咎めると、アリスは俺と瞳を交差させる。
「空、キスしたい」
何故アリスがそれを要求したのか、よく分からない。
「…ここでか?」
「うん」
「……はぁ…」
俺とアリスは、路地裏で十秒間キスを交わすのだった。
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