主役
紅魔を悪魔に連れて行って貰った後、俺とアリスは再び文化祭を回る。アリスはチョコバナナを美味しそうに咥えて食べる。
「んー!おいしー!空も食べる?今ならあーんしてあげるよ?」
「頼むわ」
アリスとの間接キス。それを脳内によぎらせた俺は直ぐに返事を返し、アリスのチョコバナナを食べる。
「ん、美味い」
「えへへ…はっ!?どうしよう空!空が食べた部分を舐め回すのが良いかな!?それとも食べて空の味を堪能したほうがいいかな!?」
普通なら出てこない様な言葉だったが、別に引きもせずに言葉を出す。
「時々ヤンデレ要素だしてくるよなお前って」
「ん?そりゃ依存してるんだから当然じゃん。それに、空は命張って私を守ってくれた。今後もし空が困ったら、私は内臓でも命でも何でも差し出す。それくらい依存してるんだよ?」
アリスが向ける俺への愛はとても重い。だけど、俺はその重さくらいの愛が欲しかった。
「今考えりゃ、俺らって良い相性だな」
並大抵のカップルはこんなの出来ない。アリスは愛が重く、男側が耐えきれない。男側は愛を必要とするから、長くは続かないか、そもそも付き合わないか。いずれにしろ、長期間のカップル成立とはならないだろう。
「確かにね〜、普通の人なら耐えらんないよこんな歪な関係」
「まぁ、俺もアリスも普通の人じゃねぇからな」
過去に異物が混入したせいで、心に歪みが出来た。その歪みを元の形に修正するために、俺の中にはアリスが、アリスの中には俺が存在する。
もう離れる事は出来ない程に。失ったら、もう一度その歪みが始まってしまう。
「……空、好きだよ」
「俺もだ。愛してる」
………
……
…
演劇が始まる1時間前、俺らは準備に取り掛かる。まぁ前日に大体のことは終わらせてるので、後は最終チェックだったりとかなんだけど。
「あっ!黒川君!アリスさんも今から?」
この演劇の2人目のヒロインである神崎さん。アリスがいなかったら間違いなくこの学年でトップレベルの美貌を誇る女子であった。
「あぁ、というか悪いな。演技とはいえ俺みたいな男に告白するし、しかも振られるとか気分悪いだろ」
「コラ!ネタバレはダメだぞー」
もしかしたら聞いてる奴らもいるかもしれない。失言だったな。
「嫌なら2人目のヒロインになってないよ。でも…黒川君って間近で観ると結構イケメンだよね?身長も高いし成績も1学期の学年8位だったでしょ?」
流石に学年一位取れるほどの頭は持ってない。しかもここの学校偏差値結構高いからな。そこでこのランキングならまずまずってところだろう。
「覚えてるのか…」
「うん。それに運動も出来るのかぁ…私も狙っちゃおっかな?」
いたずらじみた笑みでこちらを見てくると、アリスがとんでもない声を出す。
「ぬぁ!?」
「ふふ、冗談…冗談だからね?だからアリスさん、そんなガッチリガードしないでよ」
俺の前に来てフー、フー、と息を荒らしながら守備をする。
まるで餌を守ってる獣みたいだ。いや、これだと例えが酷いな。
「アリスさんや、大丈夫だからな?」
「ダメだよ空…女は狼なの…。好きな男の子が寝てたら綺麗な鎖骨ぺろぺろしたくなるくらい性欲持て余してる女子もいるんだから」
「それ…お前だよな?」
寝てる時に鎖骨ぺろぺろ……それアリスだよな。いや時々我慢出来なくなったのか知らんが指で突っついてくる時ある。あれがなんなのか分からなかったが…鎖骨舐めたいとか…変わったフェチだ。
「な!?そ、そそ、そそそそ、そ、そんなわけないじゃ無いですか!!」
「動揺しすぎだ」
「うっ…ううっ…あぁそうだよ!!空の鎖骨ぺろぺろしたいよ!!いやもう欲を言うなら全身舐め回してぺろぺろしたいよ!!」
もう開き直りやがったこいつ!!
「学校じゃその発言NGだわ!!神崎さんもいるのにそんな話すんな!」
「ぺろぺろしたいよぉぉ!!文化祭終わったらやらせてよぉおおお!!」
「わかった!!分かったから黙ってくれよ頼むから!!」
なんとかアリスの興奮を抑え込むと、神崎さんは口を押さえてプルプルと震えていた。だが我慢出来なくなったのか、それを一気に吐き出す。
「あっはっは!おっかし!ほんと2人は仲良いよね!」
「ふふん!そうなのだ!私と空は一心同体!学校でも家でもどんなところでも一緒!それが幼馴染であり、恋人なのだ!!」
「名言っぽく言ってんじゃねぇよ…」
もうツッコミが追いつかない。つか、俺がアリスに振り回されるのって久々だ。
すると、隼也が声をかけてくる。
「おーい主役3人組!そろそろ劇が始まっからとっとと準備済ませろよ〜!」
「おう!少し待っててくれ!」
俺は更衣室に自分の衣装を持って入った。
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