文化祭当日
『これより、都立海平高等学校、文化祭を行います』
そのアナウンスの後、3分ほどクラシックのような音楽が流れると、様々な呼びかけが始まり本格的に文化祭が始動する。
だけど俺らの時間は文化祭が終わりに差し掛かる6時から準備を始め、6時半から劇のスタート。んで7時に終わりだからまだまだ時間はある。というわけで、
「アリス、一緒に文化祭回ろうぜ」
「はいよ〜!今回はイチャイチャして良いの?」
「あー…まぁ限度は弁えろよ?」
電車とかでよく見る煩いバカップルとかにはなりたくないから…ねぇ?だから。
「ほら…」
俺はそれを言って腕を差し出す。
「ん?」
「いや…まぁ…カップルとかでよく見るだろ。アレなら良いよ…」
恥ずかしさを隠しながらそれを告げると、アリスの顔には満面の笑みが浮かび、俺の腕にしがみついてきた。柔らかい感触が腕全体に覆われ、思わず顔を赤くする。
「っ…じゃ…行くか」
「うん!!」
………
……
…
「いやぁぁぁ!!怖い怖い怖い!空!助けて!!」
「いや…助けても言われても……お化け屋敷にそれは無理だろ…」
お化け屋敷で助けろと言われてもどうすれば良いのか分からない。現在回ってる2年のお化け屋敷で、アリスは俺の腕に抱きつく力をより強める。
(あ…胸が当たってる……)
腕に胸が当たっているが、アリスがそれに気づいた様子は無い。だからこのまま堪能しようと思う。
「ゔぉぉぉぉ…」
「うぎゃぁぁぁぁあああああ!?」
アリスの女とは思えない叫び声が、教室中に木霊する。
………
……
…
「ふひ…ひひっ…ぜ、全然大したことなかったね!」
だが目はグルグルと回ってるし、足腰は立たないのかガクガクと震えている。
「足ガクガクにしてるから説得力皆無だっつうの。ほら、ジュース買ってやるから落ち着け」
「済まぬ…」
自販機でアリスが好きなメロンソーダを購入して手渡すと、それを開けて喉に流し込む。
「ぶはぁっ!染み渡るぅ!」
「おっさんクセェな」
「なぬ!?」
そんな他愛もない話をしていると、アナウンスが流れ込む。
『これより、3年D組主催による、リフティング大会を行います。参加希望の方は、受付を済ませてください』
「へぇ…そんなのあるのか」
どうやらD組はリフティング大会を出すらしい。まぁ、あんま俺には関係ない話だろうと聞き流す。
「うーん…うーん…」
「どうしたアリス?」
アリスはなにかを悩むように頭を唸らせる。
「いやぁ…空がそのリフティング大会行ったら間違いなく優勝するじゃん?そのかっこいいとこ見たいけど…それなら空を好きになる人が出来るかもしれないし…って」
「なんだ?俺のプレイするところ見たいのか?」
「……かなり…」
なんだそんな事か。今はデート…?の服装だけどこれで動けない訳じゃないから参加…してみるか。
「ならやる。それに俺はアリス一筋だ。もし一万分の一の確率で告白されても断るよ」
「っ…恥ずかしげもなく言うね…余計惚れるよ?」
「寧ろ歓迎だ」
………
……
…
『さぁさぁ始まりました3年D組主催のリフティング大会!案外多くの人数が集まったぞー!!計16人の参加者の中で、誰が1番リフティング出来るかというシンプルな戦い!優勝者にはこの文化祭の中限定の買い物券2000円分プレゼント!!』
受付を済ませると案外スムーズに進み、俺は台の上に登らされた。足元にはボールと、前を振り向くとそれを観戦する複数の人。
放送部の煽りを聞き流しながら、観客席にいるアリスと目が交差すると、アリスが口パクで伝えた。
が・ん・ばっ・て・ね
「よし、本気出そう…」
失敗は許されない。適当にアップを済ませていたが、今度は念入りにアップを済ませる。関節を鳴らして準備完了。
「よし…」
『さぁ、参加者の皆さん、準備完了しましたかー?それでは、カウントダウン後にスタートします!皆さんご一緒に!!』
3・2・1
『スターート!!』
ボールを宙に上げてリフティングを始めるのとほぼ同時に、俺とかなり離れている場所の奴が、ボールを大きく蹴り上げた。
「うお…たっけ…」
5階建ての校舎を難なく蹴り上げるその足の力に結構驚く。真似しろと言われたら出来るだろうが、簡単に出来る芸当じゃない。
しかも…。
「マジか…」
ボールが落ちて来て、地面にバウンドするかと思ったら全くその音はしない。完璧に足に吸い付かせてリフティングを再開している。そいつの顔が気になったが、場所的に見えない。
『すっげぇ!!なんだあのスーパープレイ!あの赤髪の派手な人!凄いぞ!』
「赤髪…?」
赤髪…といえば知り合いが1人いたな。しかもサッカーがクソ上手くて、中学時代何度か負けた記憶がある奴。
『おっ?ちょっ!?なにすんだ隼也!?』
ガタガタガタッ!と物が倒れるような音が響き、なんだ?と思った瞬間、鼓膜が破れるんじゃねぇかってくらいの勢いで声が放たれる。
『うぉぉい空!何してんだ!!他校の奴にいいカッコさせてんじゃねぇよ!お前もあんなん出来るだろうが!!アリスちゃんにかっこいいとこ見せないでどうすんだ!!』
声の主は隼也だった。いやまぁ言う事には同感だ。
「わぁってるよ…」
アイツが仕掛けたように、俺もやってやる。スイッチを切り替えた時、まずはその赤髪野郎がやったであろうプレイを真似して、ボールを高く蹴り上げる。
『うぉっ!?アイツもやった!つかさっきより高いぞあれ!?』
ボールが急スピードで落ちてくる。背中でそれをトラップしようとしたが、俺結構ブランクあるから現役時代はともかく今は出来んだろうと推察して一旦胸トラップで衝撃を殺して2メートル程宙に上げ、今度こそ背面で受け止める。
「ふぅ…上手くいった」
ここでミスったらシャレにならん。空気ぶち壊しも良いところだった。
そして、俺はその後現役時代には劣るものの、世間的にすごいと言われるリフティングを披露すると、大歓声の声が巻き起こった。
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