よし、付き合ったな。次は結婚だ。早くしろ

「にしても椎名達遅くねぇか?」


待ち合わせの自販機の前で、俺と隼也はアリス達が到着するのを待つ。


「水着のレンタルに時間食ってんだろ。それに、アリスの胸に会う水着は中々見つからないらしいしな」


前にも下着で少し愚痴ってたし。中々会うサイズが無いから苦労してるってさ。


「……貴様…アリスちゃんの…水着…だと?」


「ん?あぁ」


「そうか…お前とアリスちゃんは同棲中…ということは…貴様何て羨ましい真似をぉおおお!!!」


ぐわんぐわんと俺を揺さぶって、血涙を流しそうな形相で睨む。


「おいおい…でも下着だぞ?ただの布で興奮するわけねぇだろ」


そんなくだらねぇ会話をしていると、「お待たせー」というアリスの声が聞こえる。


「おぉアリス、遅かっ…ぶっ!?」


白いビキニに身を包み、普段はロングにしている金髪の髪をポニーテールにしている。いつもと違う姿に思わず見惚れる。


「…ど、どうかな?」


「……」


っっっっぶねぇ!!外じゃなかったら襲ってるトコだった!!何だよその水着!!胸出すぎだろうが!反則だ!!


「ホホォ、眼福眼福。だけど…胸の格差社会というのはこうも…」


「ふんっ!!」


「ぶふぉっ!」


調子こいて椎名とアリスを比較しようとした隼也が普通に鳩尾をぶん殴られる。


「アンタね…これはアリスが異常なだけなの。発達しすぎなのよアリスの胸は」


「あはは、椎名ちゃんそれ褒めてる?それとも貶してる?」


「どっちともよ」


「私椎名ちゃんの正直なところ、好きだよ」


いつのまにか仲良くなって、椎名と楽しそうに話しているアリスを見て、俺は保護者の様な気持ちになる。


「ぐふっ…椎名…加減を知って…」


容赦なく隼也の頭を踏んづけて砂場に埋めさせる。やば…怖すぎだろこの子。


「さっ、空君、アリスちゃん。こんなゴミ放っといて向こうで遊びましょ」


「お、おう…」


「は、はーい…」


俺はこの時誓ったのである。絶対に椎名を怒らせない事にしよう、と。


………

……


「ぶはぁっ!!っくそぉ!!負けた!!」


俺と椎名は遠くにある島を一周して帰ってくる遠泳で勝負したのだが、結果は負け。タイムは2秒差とかなり近かったが、それを言われると余計に悔しさが増してくる。


「いや…椎名は現役水泳部だぞ。しかも全国大会準優勝…それに勝つなんて無理だろ。ってかタイム差が2秒なんだから落ち込む必要は……」


「うるせぇ!!勝負は勝負だ!そんで負けたんだから何の価値もねえんだよ!!」


「お前のその自分に厳しいのは好きだけど、俺とかアキラとか気心知れてる連中じゃねぇと嫌味にしか聞こえないからな?」


「わぁってるよ。だからテメェには言ってんだろ」


その意味を数秒間考えた隼也は、俺から離れて自分の体を抱きかかえた。


「何?俺の事信頼してんの?なんか気持ちわりィ…」


「殺すぞてめぇ。それよりアリスはどうした?」


「自販機でジュースを買ってくるってさ〜。疲れてる空にジュースを上げるって張り切ってたぞ」


そりゃあ悪いことをしてしまったみたいになる。辺りを見渡してみると、自販機の近くにはアリスと、それを取り囲む3人の男が居た。


「っ…ちょっと行ってくる」


もやっとしたものが心に残り、俺はその場所に向かって慣れない砂浜を走り抜けた。


「ねぇねぇ良いじゃん。俺らと一緒に泳ごうぜ?」


「友達と来てるんで無理です」


「そんなこと言わずにさぁ、じゃあその友達も誘って来てよ。飯奢ってあげるから」


「はぁ…いい加減に…」


「アリス!!」


激怒しそうなアリスに声を放つと、アリスもこちらを発見した様で、こちらに満面の笑みを浮かべて走ってくる。


「空〜!!」


俺の近くに来ると、ポカリを渡してくれる。それを受け取って喉に流し込む。


「ありがとアリス」


「なんのなんの。機にするこたぁありませんよ。それよりさ、12時だからそろそろお昼ご飯にしない?」


「んっ、おぉ本当だ」


腕時計に目を通すと12時ジャストだった。海の家で何を食うかと考えていると、俺にすんげぇ形相で睨んでくる大学生らしき男達。


「ん?君が友達かぁ…悪いんだけどさ、彼女俺らと遊ぶからちょっと席外してくんない?」


「あ?」


額に青筋が立ち上がるのを感じるが、それに気づいたアリスが俺と手を繋いで冷静に戻す。


「……悪いんすけど、コイツ俺の彼女ですし、俺も少し独占欲が強いみたいなんで預けることは出来ません。もし強行手段とるのなら警察呼ぶんで」


この手のヤンキーは警察という国家権力には弱いからな。そう言うと舌打ちをしながら立ち去っていく。


「ふぅ…もう安心だぞアリ…アリス!?」


顔を真っ赤にして顔から湯気が迸っている。


「ど、どうした!?熱中症か!?」


「わ、わわわ、私と空って…つ、付き合ってたんだ…」


「あ…」


そうだ、お互い好きだと言う気持ちはあるし、キスもしてるけど付き合ってるというのはなかったんだ。


「わ、悪い!嫌なら撤回する…」


「あのさ、私が空の彼女になる事嫌だと思う?寧ろウェルカム。超ウェルカムなんですけど!!」


その言葉に俺も赤面し、もう理性が吹っ飛んでしまう。


「おぉそうか!!ならこれから付き合おうか!」


「そうだね!今から私らはカップルだ!!」


こうして、前代未聞のカップル成立が行われたのだった。

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