ダブルデート

「んっ…んんっ」


寝付きにくい病室のベットではなく、気分を最大限落ち着かせることが出来る自分のベットで目を覚ます。自分の胸に感じる感触はなんなのだろうと思うと、直ぐに答えは解決する。


「あぁ…成る程」


俺は、いや、俺とアリスはどうやら抱き合ったまま眠っていたらしい。というか、寝顔もクソ可愛いとか反則じゃありませんかね?


「……」


可愛すぎるのでより力を強めて抱き締めると、「んっ、んにゅ?」と寝言の様なものが聞こえる。


「うへへへへぇ…空ってばいい匂〜い。このままずっとこうしてようよ」


どうやらアリスも起きたらしく、俺を抱き締める力がより強くなる。


「同意」


この状況で抗える訳が無く、俺はアリスを抱き締める。

すると、インターホンの音が俺の部屋の中まで鳴り響く。今日は平日だから親父も母さんも居ない。となれば、俺が出るしか無い。


「チッ…」


アリスと居られなくなる事により少しだけ苛立ちを覚えてベットから立ち上がり、階段を降りて玄関の扉を開いた。


「よう空〜!今から海行か」


「なんだ隼也か」


配達かと思ったらただの隼也かよ。扉を閉めて鍵をかけると、二階から降りてきたパジャマ姿のアリスが問いかける。


「誰?」


「いや、間違いだったミテェだ。それより朝飯食おうぜ」


「うん!」


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン


「うるっっっせぇわこのバカ!!人ん家のインターホンずっと鳴らし続けやがって!!」


扉をぶち上げて隼也と口論になる。


「炎天下の中来た友達を追い返す方がどうかしてるだろうが!!つか、『なんだ隼也か』でなんで扉閉めるんだよ!!」


「なんでテメェに時間取られなきゃならねぇ。俺は色々忙しいんだ」


「…ふふっ、アリスちゃんとイチャイチャすんのに?」


隼也はニヤニヤしながらいやらしい視線を向けてくる。恐らくは俺が恥ずかしがる事を楽しみにしていたんだろうが、残念ながらそうはいかない。


「そうだが何か問題でもあるか?」


「恥ずかしがれや…まぁいいや。一回上がるぞ」


「はいよ。リビングで待ってろ」


俺は今寝起きだ。アリスも同じくだから、少し支度したい。女子であるアリスなんて特にそうだろう。


………

……


「夏祭り…あぁ、そういや今日だったか」


色々準備を済ませて隼也と会話すると、夏祭りというワードが飛んで来た。


「そっ!お前ってば入院してて夏休み楽しめてないだろ?だから今から海行って、その帰りに夏祭り行こうぜ」


すげぇスケジュールだが、それならこの午前のクソ早い時間に来たのも納得だ。因みに今の段階で時計は7時を指している。


「むにゅぅ…」


アリスが眠そうにして俺の肩に頭を預けてくる。こいつ朝はかなり弱いからな。


「椎名も一緒に行くから、所謂ダブルデートって奴だ。どうだ?」


「どうだ…と言われてもな…」


俺は少し悩んでいると、隼也はアリスに言葉を出す。


「なぁアリスちゃん。空の水着姿、見たくね?」


「っ!?」


幻影の猫耳が跳ねたように、アリスが反応する。


「合法的に空の裸に近い姿を見られるってわけだ。どうだ?」


「空!!海行こうよ!!一夏の思い出を作らなきゃ!」


「お前今完全に釣られたよな!?」


ツッコミを入れるが、隼也のターゲットが俺に変わった。


「なぁ空、アリスちゃんの水着姿、見たくねぇのか?」


「………見たいです」


「よーし決まりだ!!んじゃ各自荷物を持って駅に8時に集合ってことでよろしく!!」

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