復活、そして一線

「ほい、頭は完全に完治してるし、脳に障害も残ってねぇ。バカはえぇが退院だ」


「っしゃあ!!」


親父にそう言われ、俺は頭についていた包帯を外してゴミ箱にシュートして椅子から立ち上がる。


「んじゃ、あんがとな親父」


この2週間、ロクな事はしなかったがアリスとの距離をとてつもなく縮められた。それに関しては本当に感謝してる。


「ったく…マジでどうなってんだテメェの頭は。頭砕けて2週間で治すとか化けもんだろ」


「毎日アリスの看病があったからだろうな。つか、実の息子に化けもんとか言うんじゃねぇ」


「長年医者やってたら例外すぎて化けもんなんだよテメェは。ほら、外にタクシー手配してあったからそれで帰れ。俺はまだ仕事が残ってんだ」


外にタクシー手配する優しさはあるのに見送る優しさないのは親父らしい。


「へいへい、分かりましたよ。じゃあな親父。仕事頑張れよ〜」


俺はそう言い残して退院した。


………

……


タクシーで何処か懐かしげのある家に到着する。いつも持ち歩いている家の鍵を使って解除して、扉を開く。


「ただいま〜」


扉を開いた瞬間出てきたアリスが、口元に指を当てて呟く。


「ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」


昼飯は病院で食べてきたし、病院の風呂には毎日入っていたから夜まで構わないだろう。だから。


「アリスで」


「え!?ま、まさかこんな真昼間から…そ、そんな…は、破廉恥だよ!?それにまだ私達始めてじゃ…」


まさかこんなに恥ずかしがるとは思っていなかった。まぁここで救済処置といったら大袈裟だが、その手を差し伸べてやる。


「冗談だ」


「ふぇ…?」


「久々の家だからな。少し寛がせてくれ〜」


背伸びしながらリビングのソファーにダイブして、「ふぅ」と息を吐く。やっぱ我が家が1番だ。


「む、むむむむうっ」


アリスはやたらほっぺを膨らましてリスみたいになってる。


「どうしたんだよアリス」


「こ、これじゃ生殺しだよ!その気にさせるだけさせといて!」


「なら来るか?」


「……うん」


ソファの上に仰向けになると、アリスが俺押し倒すような体制になり、強引にキスを行う。


『んっ、ちゅぅっ、んっ』


舌を絡ませてキスを行い、唾液の音がリビングに広がる。我慢出来なくなったアリスは、俺の体に抱き付く。

だけどその時、俺の息子がヤバいことに気がつく。


「んっ!?」


アリスがビックリした様子で顔を離す。

待て、言い訳をさせてくれ。アリスがここに来てから約4ヶ月が経とうとしている。その際俺は一切その類をしていない。健全な男子高校生がだ。だけど、この刺激的な数週間、俺の息子は限界となっていた。


「シたい?」


いつものように天真爛漫という四字熟語が似合うアリスだったが、この時だけは妖艶に、大人の魅力のようなものを醸し出してそれを告げた。

俺は迫り来る性欲を必死に堪えて言葉を出す。


「…待ってくれ」


「私は良いよ?空になら…」


「俺だってそうだ。アリスの事が好きだから、その…シたい。だけど、俺らはまだ高校生だし、受験も控えてる。正直に言うと、重いかもしれねぇけど…俺はアリスとの結婚を考えてる」


それくらい好きになってしまった。この気持ちは、もう二度と変わらないと思うくらいに。


「だから…ちゃんとした学校に行く。もしここでアリスを求めたら、俺は歯止めが効かなくなる」


そうなったら受験勉強どころじゃなくなる。良い大学に行けば良い就職が出来る訳じゃないが、就職で圧倒的に有利になる。だからそれをするために、今はしない。


「だから…今は待ってくれ」


「……わかった。じゃあ今は、これで我慢してあげる」


アリスは再び俺に、舌を絡ませるキスをするのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る