夏祭り
「たこ焼き一つください」
「おっ、嬢ちゃん可愛いねぇ。可愛い子には、たこ焼きオマケだ!」
「ほんと!?やったぁ!」
海でかなり疲れた足で、俺らが向かったのはその近くの神社にある祭り。
アリスの浴衣姿を見たかったが、それを用意する時間もなかったので潔く諦める。
「見て見て空!オマケしてもらった!」
「おう…って何だこれ!?もはやタワーじゃねぇか!」
たこ焼きのタワーが出来上がっていた。流石アリス、恐ろしい美貌の持ち主だ。
俺とアリスは一度隼也達とは別行動を取りながら色んなところを回っている。金は多く持ってきたので結構楽しむことが出来てる。
「空よ、飲み物を買う際、どっちも財布を出すなど不効率だとは思わんかね?」
「何が言いたいんですかねぇ」
「ジャンケンして勝った方がジュース奢りのジャンケンポン!!」
「おっ」
思わず俺が出したのはチョキ。そしてアリスが出したのはパー。
「ふご…ごぉ…ごごごぉ…くうっ…」
「ご馳走様ですアリスさん」
「くそぉぉおおおおっ!このお返しは空のハグ!オッケー!?」
こっちを指差して冷静な言葉とはとても思えない言葉を出してくる。でもまぁ、これがアリスの平常運転だし。
「……オッケー」
「え…マジ?」
「マジだ。つか…恋人でハグダメとか聞いたことねぇよ」
「そ、そっか…なら帰ったら…」
「…おう」
とまぁ、そんな会話をすりゃそりゃ気まずくなるわな。2人で手を繋いで歩きながらその空気を噛み締めていると、屋台でとある知り合いを見つける。
「アレ?」
近くに寄ってみると、確かに間違いが無い奴が居て、俺はその焼きそば屋に寄っていく。
「こんなとこで何したんだよアキラ」
「あ?って…空、退院したのか」
屋台で焼きそば作ってる目つきが悪いアキラ君。何でこんなとこで焼きそば作ってんだ?バイトか?
「おう。昨日な。つか何してんだ?あ、焼きそば一つ」
注文するの早速作ってくれる。その合間に話を行う。
「欲しい新作スパイクがあんだけど金が足りなくてな…バイトだ」
「成る程な」
サッカー馬鹿のアキラがバイトするなんて驚きだが、その理由なら納得だ。
「つか、前はアリスがお前にアタックしてたのに、今は付き合ってんのか?」
こういう純粋な質問をしてくるのはアキラらしい。
「……むふふふふぅ、そうなのだー!!漸く空も私の魅力に気がついて、今はカップルとなってるのですよ!」
「まぁそんな処だ…恥ずかしいがな」
「へぇ…んじゃ、これ食っとけ。退院祝いと記念だ」
3つの焼きそばを袋に詰めて俺に渡してくる。俺はそれを受け取る。
「わり、ありがとな」
たまには良いところがある…そう思ったのに。
「1500円」
「金取るのかよ!?」
酷い!極悪悪魔だ!!ヤクザのする奴だよこれ!!
「うるせぇとっとと払えや」
もうヤバイ…コイツ目つきがヤクザなんてもんじゃない。もうそれ通り越して鬼だ。
………
……
…
「うっぷ…流石に食い過ぎた……」
アキラの野郎に焼きそば3つ食わされる前に、たこ焼きやらお好み焼きイカ焼きやら沢山食ってる。流石に食い過ぎて気持ち悪い。
「大丈夫空?なんか買ってこようか?」
「だ、大丈夫だ。それより隼也達は何処だ?」
神社の近くを集合場所にしといて本人が来てないってのはどういうことだ。まぁ椎名が来てないって事は何かしらの理由があるんだろうが。
「もう花火始まるぞ…」
少しずつ焦りが募ってくる時間に、「おーーい!!」という声が森の中から聞こえてくる。
「こっちだこっち!来てくれ!」
人混みがほとんどない場所に隼也達が居て、俺とアリスはそこに向かって小走りで向かう。
「おい、なんだよここ」
そう言いながらも隼也は小走りで走りながら俺らを案内する。茂みを抜けると、夜空が一望できる場所にやってきていた。
「すっげ…」
輝く星々が見えて、ありえないくらい綺麗だった。
「ここ俺の地元でさ、こっからだと花火がよく見える。俺の秘密の場所だ」
「良いのかよ…俺ら連れてきてさ」
「別に良いだろ?親友と親友の彼女、んで、俺の彼女になら」
隼也は椎名に目を向けると、目を向けられた本人は顔を赤くしながら髪を弄る。その微笑ましい光景を見る。
「私たちも…側から見ればあんな風なのかな?」
「そうだろうな」
アリスとそんな会話をすると、花火が打ち上がる音が耳に聞こえる。
パンッ!!!と空中で弾けて、綺麗な花を咲かせた。
「……なぁアリス……」
「何?」
「…俺、お前の事好きだわ」
そう言うが、全く間を入れずに返答を返す。
「……私は空の事大好きだよ。ずっと、この先もずっと…永遠に」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます