早よ付き合えや

夕食の時間帯になると、扉を開いて俺の飯が運ばれてくる。その際に来た看護師は…なんとアリスだった。


「えへへへ…どうぞ〜」


親父がアリスにこれを着る事を許して、俺がその服装を褒めたばっかりにこんなことになってしまった。


「ご飯の後は私を頂いても構いませんよ?」


「ぶふっ!」


アリスは第1ボタンを外して誘惑する。

あんな事件が起こったというのにもうこんなに元気になってるんだったら大丈夫だろう。

でも、俺は大問題だ。今まではあまり感じなかった煩悩を振り払おうとするが、俺も男だということだった。


「あ…あのなアリス…俺だって男なんだから…もっと警戒心をだな」


「好きなんだから警戒心を抱く必要無いでしょ?」


「すっ…」


好き、その単語を聞いてますます顔が赤くなり、それを隠すように顔を抱えると、アリスは微笑みながらベットに座った。


「……空は…どうなの?」


俺は、アリスをベッドに押し倒した。


「アリス…もう一度言うぞ。俺だって男だ。好きな女とはその…キスしたいとか、その先をしたいとか思っちまうんだよ!!だから…そんな無防備で近づくなよ…」


「……私は空にメチャメチャにされたい。私の全てを、空に全部捧げたい」


それを言うアリスの言葉は、正直言えば異常だった。だけど、俺は一度聞いている。アリスが俺に依存すると言う言葉。アレは冗談でもなんでもなく、本当に俺に依存したんだろう。

まぁ、そんなところも全部ひっくるめて好きになっちまったんだ。


「というか…ふふっ」


「ん?」


「前に言ったよね。空の口から好きって言わせるって」


俺らが再会して間もない時間に、そんな事を言われた事を思い出し、その言葉をさっき口走った事も思い出す。


「私の夢だったんだ…空の口からその言葉を聞くのが。例えそれが嘘でも聞きたかったけど…全然そんなこと言ってくれなかったから」


「冗談で好きって言うほど、クズじゃねぇんだ」


「うん、知ってる。だから今…本当に嬉しい。体の全部が…満たされていく」


瞳をそっと閉じて胸に手を置き、再び瞳を開く。


「空…もう一度…言ってもらっても良いかな?」


覚悟を決め、アリスの瞳と俺の瞳を交差させる。


「…アリス、俺はお前が好きだ」


「…嬉しい…」


アリスはそれだけで満たされたんだろう。だけど…俺はまだ…物足りない。


「好きだ…好きだ、好きだ!!大好きだ!本当に…どうしようもねぇくらい…お前に…惚れちまった」


「ちょっ!?そ、空!?嬉しい…けど…その…心の準備が…」


「なんだよ…いつもはリードしてるくせに、俺がこんなになったら弱いんだな」


いつもアリスが抱きついたりとかする主導権を握っているが、今回ばかりは俺に主導権がある。


「だって…だって…ううっ…ずっと好きだった人にこんなことされたら…心臓がもたないから…」


「なぁアリス…キスして良いか?」


なんの脈絡も無くそれを告げると、顔を真っ赤にしながらも、アリスはたしかに頷いた。


「その…初めてだから…」


正直少し安心した。だってアメリカってそういうの結構してそうだったから。


「俺だってそうだから安心しろ」


そして、俺は顔を徐々に近づける。近づけるたびに心臓の鼓動が早くなり、このままでは死んでしまうんじゃないかと思うくらいの爆音が耳元に響く。


「……んっ!!」


「んっ!?」


なんと、俺じゃ無く下に居るアリスから唇を重ねてきた。いや…それだけなら良い。唇を強引にこじ開けられ、アリスの舌が俺の口の中で暴れ回った。


「んぐっ!?」


主導権を握られるわけにはいかず、俺もそれに対抗した。

10秒か、20秒か、何秒そうしていたか分からないくらいの時間、唇を合わせ続けるが、息が続かずにお互い離れる。


「へへっ、へへっ…空との大人キスだ〜。ねぇ、もっかいやろ?」


「……あぁ」


俺は少し恥ずかしながらもそれに答えたのだった。

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