アリスちゃんの暴走劇
「おはよう空!!体拭いたげよっか!?」
夜中はワンワン泣いたアリスだったが、朝になると流石に落ち着いて俺にそう問いかける。だけど。
「目をギラつかせながらはぁはぁ言ってなかったらやらせてやるよ」
「そんなの無理じゃん!!久々の空に興奮するなってAV見ながら興奮するなって言われてるのと同じだよ!?」
「俺はお前のAVかよ!!つか女がそんなこと言うな!!」
「私の三大欲求!!ほら言ってみな!」
「…食欲、性欲、睡眠欲だよな」
それがどうかしたのだろうか。すると何処から取り出したのか、謎のホワイトボードを取り出す。
「私の場合それがこうなるわけですよ」
キュッキュ、とマジックペンでそれを描き、その内容を俺に見せる。何々?空欲!空欲!空欲!ってバカじゃねぇの!?
「100歩譲って性欲が変わるのは分かるわ!でもなんで食欲と睡眠欲無くなったんだよ!」
「空を見つめたらご飯なんて食べなくても平気だし、空の寝顔が芸術的すぎてロクに寝れなかった日もあるから」
「お前そんな事してたのかよ!!っぐっ!」
大声を出すと頭に響き、ズキズキと痛む頭を抑える。それと同時に、扉をノックせずに担当医の先生が入ってくる。
「おう空、目ぇ覚めたか」
カルテを持って俺に歩み寄る親父。親父のお陰でこの個室を借りれてる訳だし、正直感謝しかない。大部屋でこんな姿晒してたら追い出されかねないからな。
「あぁ、ありがとな親父」
息子の頭の中を覗くなんてかなりメンタルに来る筈だ。だけど親父は完璧に手術をこなしてくれたという。
「なーに気にすんな。人を助けるってのが医者の役目だ」
内心かなりカッコいいと思ってしまったのは内緒だ。
(だけど…医者か…)
親父は家に居ない日がかなり多い。だから子供の頃は自分にあまり構ってくれずに嫌いな存在だった。だけど今なら分かる。俺が遊んでる時も、部活してる時も、勉強してる時も、親父は人の命を救ってきた。
(少し…憧れるな…)
進路なんて、今まで考えたことも無かった。だけど…まぁどうせやりたいことも特にねぇし…医者ってのも…ありかもしれないな。
「それより空、体調はどうだ?」
「オールグリーン」
内心の考えを一旦隅に置いてそれに言葉を返す。
「嘘こけ。アリスちゃんの前だからってカッコつけんな。本当は?」
「超気持ち悪いしクソ痛い」
正直にそれを告げる。頭は以前ほどじゃないがかなり痛いし、それに以前はなかった気持ち悪さが出ている。
「成る程な、鎮痛剤出しとく」
それをカルテに書いてペンを胸ポケットにしまう。
「割と早く頼むわ」
「あいよ。だけど他の患者も見なきゃいけねぇから1時間はかかるぜ?」
「了解」
そういうと、親父は部屋を出て行こうとする。
「あ、そうだアリスちゃん。ちょいちょい」
「あ、はい」
アリスを手招きして、親父はアリスと共に部屋を出て行くのだった。
その間、若干暇になってしまうが、母さんが持ってきてくれた漫画を読んで暇つぶしを行う。
「ははっ…やっぱ鋼の錬○術○おもしれぇな〜」
本に没頭しそうになる時、部屋の扉をバン!!と勢いよく開いてアリスが入ってくる。
「な…」
その姿はナース服と言って良い姿で、モジモジとして顔を赤らめながら俺に問いかける。
「ど、どう?」
親父がアリスを連れて行ったのはこれが理由だとようやく納得すると同時に、俺は頭を抱えて下を向く。
「あ、あぁ…ご、ごめん!!こんなのイタイだけだよね!今すぐ着替えるから…」
「いや…違う」
アリスを見ずにそれを止めて、俺は鼻を抑える。
「その…あれだ…今のお前…可愛すぎるから…無理…」
「そ…そうなんだ…。今の私…可愛いんだ…」
そして、暫く謎の沈黙が続くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます