アリスの成長、そして…
「るんたったったーるんたったったー」
私、事アリス=クロネストは鼻歌を歌いながら、私は下宿先の廊下を歩く。結構古い木造の学校を改築したものらしいが内装は綺麗で、しかも…。
(ふっふっふ…何と露天風呂があるのだ〜)
山の水脈を偶然掘り当てた露天風呂があるらしく、私はこの時のために様々なものを用意してきたのだ。
まずは最新型のカメラ!!リアルに近い空の肉体を写真に収めるのである!因みに空には秘密にしているが、この中には無防備な寝顔やサッカーをしている時のギラついた様な目の空もあるのである。
その次にこの小型ドリル!え?何に使うかって?そりゃあ露天風呂の穴をこじ開けて空の裸体を除くために決まってるじゃないっすか〜。
「おっ、あったあった」
私は忘れ物である様々な空対策用の物が入ったナップザックを抱える。
「危なかったぁ…」
小型ドリルとかカメラとかは良いけど、これには媚薬とか念のためのゴムとか入ってるからねぇ。
「よし、もーど…っ!」
後ろを振り向くと、以前私と空に絡んできたC組の人達が居た。ナップザックを力強く抱えて、恐怖を押し殺す。
(駄目…何を怖がってるのよ…)
アメリカで、いつまでも弱いままの自分がずっと嫌いだった。だけど今は違うんだと言い聞かせて、目的地の通路に向かって歩く。
「おい、待てよアリス」
いきなり名前を呼ばれて、警戒心がより引き上がる。
「…なんか用?」
3人は下卑た笑みを浮かべて私に近づいてくる。徐々に壁へと追いやられる。
「なぁ、お前ってあの…あ〜、へんな奴とヤッてんだろ?じゃあ俺もヤらしてくれよ。3万でどうだ?」
そんな事実は一切無い、私は処女だ。空以外に貞操を捧げるつもりは微塵もない。
「ふざ…けないでよ。私はそんなことしないから」
「あ?」
怖い、怖い、怖い。ここから今すぐにでも立ち去りたい。だけど、ここで逃げたら今までの自分と何も変わらない。変わるんだ。空に迷惑をかけないためにも。
「おいおい、そんなこと言ってさぁ…」
私の肩に触れる男の手。空なら心踊っただろう。だけど、今感じているのは恐怖だけ。しかも一瞬頭が真っ白になった。
「触らないで!!」
私は我に返ってその手を振り払う。
「てめぇ…良い女だからって調子のんじゃねぇぞ…」
「調子になんて乗ってない!アンタらがしつこいからこうしてるのよ!!」
「て…めぇ…」
「これ以上騒ぐなら先生呼ぶから」
「クソが……」
3人は私から離れて歩きだし、軈て見えなくなった。その安堵感からか、私は胸をなでおろすと同時に地面にへたり込んだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…やった…やったよ空……」
喜びで胸が一杯になりそうになる。ここに空は居ない。だけど、もう守られるだけの存在じゃなくなったことに嬉しさを感じて、涙を流しそうになった。
「あぁ、よく頑張った」
「うわぁっ!?」
いきなり横から話しかけられ、無様に地面に腰を落としてしまう。そこに立っていたのは空だった。
「そ、空!?いつから!?」
「あ〜、お前が触らないでって大声を上げたあたりから。なんかあったのかと思って言ってみたら、お前が斎藤達を追い払う場面を見てさ」
「うっ…うそだぁ…」
今思い返してみればすっごい恥ずかしかった!!赤面して顔を抑えると、空は私の頭を撫でてくれた。
「よく頑張ったなアリス。だけど、頼る時はちゃんと俺を頼れよ?その為に俺が居るんだから」
「うん。その時は頼むよ。私の大好きで、大好きで、愛してる空に」
「ははっ…そりゃ、責任重大だな」
空はそう言って笑った。
空が笑うたびに、私の心はどんどん苦しくなる。ここから離れたくなくなって、一緒にいたくなってしまう。
気がつけば空に抱きついて、鼓動の音がより速くなる。
「アリス?」
「ふーんだ!空が悪いんだもん!空が私をその気にさせるから!」
空のことが大好きで、胸が張り裂けそうになる。
その幸せの裏で、とんでもない悪意が渦巻いているとも知らずに。
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