林間合宿当日
行きのバスは、林間合宿場所であるとある山奥に向かって走り出した。その道にかかる時間は凡そ3時間だったが、隣にいるアリスに構えば三時間なんてすぐに過ぎ去りそうだ。
「で?アリスさん?何してんのかな?」
俺の腕に抱きついて離れないのはいつものことだが、今回はヤケに強い。
「空と一緒に寝れないからね〜。今のうちに空成分を補給しているのである」
「それなくなったらどうなるんだ?」
「今の私だと2日共有してなかったら動かなくなりまする」
ヤベェな空成分、最早麻薬じゃねぇか。
「おい空、ちゃんとスパイク持って来ただろうな?」
「オカンか。持って来たっつうの。今は荷台に詰め込んでるよ」
俺らの班の最期の1人はアキラだ。これから向かう林間合宿先は、山奥の学校を改造したものらしいので、当然運動場が存在する。そこではゴールネットもあるらしく、アキラとサッカーでタイマンを張る事で俺らの班に来てもらった。
まさか中学の時のモノを倉庫から引っ張り出してくるとは思わなかった。
「テメェにゃ負けっぱなしだからな」
「何回か勝ってるだろ」
「10回やって3回勝つなんて最早運ミテェなモンじゃねぇか。フィジカルもテクニックもテメェの方が上なんだ。じっくり見させてもらうぜ?」
サッカー馬鹿ここに極まれり。いや、俺の中学の知り合いでもう1人サッカー馬鹿がいた様な気がする。
「……」
「なぁ、なんでアリスさんがドヤ顔してるんだ?」
今は俺の後ろにいるアリスを振り返ってみると、見事なまでのドヤ顔を見せていた。
「そりゃあね?好きな人が褒められれば自分のように嬉しいモンですよこっちは」
「へぇ…そんかもんなのか」
アキラは感心したように頷く。
「お前好きな人いた事ねぇもんな」
そんなことする暇があるんならサッカーに全てを捧げる。格好を付けたい男子が口で言うのは簡単だが、それを実行に移す人物は限りなく少ない。その少ない人物の中に居るのがアキラだ。未だ嘗て初恋なんてしたこともないらしい。
顔も良くて成績も悪くない。身長は180もあり性格は…まぁサッカー馬鹿なだけで悪くはないのに、勿体無い。
「んなこたぁどうでも良いだろ。それより今俺の目標はコイツだ」
「え…」
持っていたサッカー雑誌を出して提出する。そこにはとある奴がプレイしている写真が載っていた。
「大阪の都立皇王学園10番、四宮紅蓮。去年の選手権の得点王だ」
「それがどうかしたのか?」
「こいつと一度タイマン張ってボロカスに負けたからな。こいつは多分お前と同じくらい強えからよ、選手権に向けて特訓だ」
まぁそれで悪いことはないな。うん。
「ってなワケで、2時間ぐらいよろしく頼むわ」
「ふざけんな!!俺の時間無くなんだろうが!!」
そんな会話をしながらも、バスはドンドン先に行って俺達は、目的の場所に到着するのだった。
………
……
…
部屋割りも自分達で決める。6人一部屋で、俺とアキラと隼也は同じ部屋で、他の奴らも全員同じサッカー部の部員だった。つか、俺以外全員サッカー部じゃねぇか。
部屋に入って各々の荷物をベットの下に置く。するとポン、と俺の肩に手が置かれた。
「タイマンって約束だろうが」
「まさか…今やるのか?」
「当然」
まぁ自由時間だし特に問題も無い。動きやすい服装に着替えてサッカー用のストッキングを履いてバックを持って部屋から出る。
廊下を少し歩いていると、前方にアリスを見つける。
「あっ!空〜!!」
俺を見つけると、笑顔でこっちに向かって走ってくる。
「エナメルバックなんか持って、どっか行くの?」
「あぁ、少しサッカーしようと思ってさ、お前もくるか?」
「うん!行く行く!」
こうして、俺ら3人は炎天下の外でて、運動場に向かってサッカーボールを蹴り飛ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます