期末テスト

「起きてよ空〜、起きないと襲っちゃうよ?良いのかなぁ?」


「っ!!」


その声を聞いて直ぐに起き上がると、目の前にいるアリスが俺に跨っていた。


「アリス…」


「えへへ、おはよ」


「おうおはよう。だがさっきの言葉は少しおいたがすぎるんじゃないか?」


「だって好きな人が無防備な姿で寝てたら襲いたくなるのが女のさがって奴だからねぇ」


素直に俺のことを好きにと言われると少し恥ずかしい。

それにあの遊園地以降、アリスの顔が頭から離れない。


(クソッ…どうしちまったんだよ俺)


「空?」


「いや…なんでもない。じゃあ着替えるから下降りててくれ」


「いや、ここで待ってるから着替えてて」


「………」


目を両手で隠しているが、その指がガン開きでこっちを凝視しているのが見てわかる。


「1分以内に出ていかなかったら2時間目まで口聞かねぇからな?」


一日中とかよりは良心的だろう。だけどそれでもアリスには効果覿面だった。


「お願いだから…それだけは辞めて?言うこと聞くから…」


俺達が学校に行く際、アリスは無言で俺の腕に張り付いて離れようとはしなかった。


………

……


都立海平高等学校で七月に行われる、1学期期末テスト。これで赤点を取れば夏休み2週間補習漬けという、学生にとって地獄以外の何者でも無いテストだ。そして、そのテストの前日に、漢文、古文、現代文の3つの小テストが返ってきた。


「なぁ空〜、お前小テストどうだった?」


小テストが返された時、隼也が俺に問いかける。だけど人に点数を書くときはまず自分から言うのが道理だろう。


「お前は?」


「俺現代文が91!凄くね!?」


こいつ…意外と頭いいのが腹立つ…。


「くそっ…78…」


「っしゃあ!!!」


学生恒例の友達と点数を見せ合う行動で、無事勝利を収めた隼也は有頂天になりやがる。


「じゃあ他2つは?俺古文が苦手でさぁ、68。漢文は90なんだけどさ」


自信満々にそう告げる隼也だったが、俺は待っていましたと言わんばかりに笑みを作って古文と漢文を出した。古文98点、漢文100点だ。こっちは結構得意なんだよ。近くにテストを突きつけて笑みを作る。


「ほら、ほら、俺の点数を口に出して言ってみろ。ん?」


「うわああああああっ!!こいつ嫌い!!嫌い!!」


隼也は泣きながら逃亡していった。だが俺は見逃さない。俺の隣にいるアリスが、顔を真っ青にしていることに。


「さぁアリス、点数を見せようか?」


ぷるぷると震えて涙目になっているアリス。これは、相当悪い点数だったんだろう。


「うぐっ…そ、空、少し聞いて欲しいんだけど?」


「良いだろう。聞いてやる」


「そもそも学歴で人を図るなんておかしいと思うの。それに私帰国子女だし、国語は出来てなくても仕方ないと思うんだ」


「あぁ、俺もそれは思ってる。だから見せなさい」


「は、はい…」


現代文28点

漢文2点

古文0点


「oh…」


思わず声が出てしまった。つかなんで現代文だけ少し高いんだ?いや高くはねぇけど。


「うっ…ううっ…」


泣きそうになっているアリスの肩を叩き、慰めると同時に提案する。


「俺が勉強教えてやるから。そんな心配すんな」


「ほんと?」


「おう。と言うか俺も数学と英語ちょっと怪しいからさ、教えてくれよ」


「うん!!うん!!教えるよ!!」


こうして、俺たち2人で勉強会が開かれることとなるのだった。

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