初めてのデート

あの日から3日、俺とアリスは学校の教室で昼飯を食べていた。

あれ以来、あの3人組からの悪意は消えたとは言いづらいが、それでもアリスに手を出そうと言うそぶりは一切見せずに3日の時が過ぎた。アリスはというと。


「空〜!キスしよ!」


「断る」


とまぁ、結構手数が強引になってきた。時折俺を舐め回すような目で見てくるが、まぁ見るのは本人の自由だし放っておいても問題はない。流石に強引にキスしたりとかはしないから、そこらへんはちゃんと分かってくれてるんだろう。


「ぶぅっ!じゃあここ行こ!」


机の上にとあるチケットを2枚叩きつけた。その内容は、とある遊園地のチケットだった。


「おぉ」


「明日土曜だしさ、良かったら…その…一緒に行かないかなぁ…なんて」


俺に抱きついたりとかそんなのには一切躊躇しないアリスだが、何故遊園地に誘う事を緊張するのは分からない。

まぁそれはおいておいて、明日は別に予定も無いし大丈夫だ。


「おう。行こうぜ」


「本当に!?やったあ!!」


子供のように大はしゃぎするアリスに、俺も自然と笑顔になった。


………

……


「おーいアリス、準備出来たか?」


俺の着替えは終わって居るから、部屋の扉の前に立ってアリスに問いかける。


『うん!開けていいよ?』


「おう、分かっ…」


その時嫌な予感がした為、念のために聞いておく。


「開いたら全裸のアリスがいたりしねぇよな?」


『……そ、そそ、そそそそんなここことはないよ!?』


「動揺しまくってんじゃねぇか。着替えねぇと遊園地いけねぇぞ?」


『わわわわっ!それはダメだよ!40秒で支度するから!!』


なんでアメリカに居たアリスがそのネタ知ってんのかは分からない。そして宣言通り40秒ほど経つと、部屋の扉が開かれた。


「おっ、準備出来たか」


「う、うん…変じゃないかな?」


赤い服と白いスカート、単純にそれだけなのにアリスの前だととんでもなく可愛く見えてしまう。


「へ、変だったら言ってね…その…アメリカの時に買ったやつだから…日本のとは少し違う…から」


「バーカ、クソ可愛いよ。俺じゃなきゃ惚れてるレベルだから安心しろ」


いや普通にそう思う。


(これ遊園地出歩いてて良いのか?道中絶対ナンパされるぞ)


今までも買い出しの時に芸能界スカウトとかあったらしいが、今回のアリスはもっと人目のつくところに出るからな。少し警戒しておく必要がありそうだ。


「ぶーっ私は空が惚れなければなんの意味もないんだけど?」


口を尖らせながらそう言うと、反射的に誤魔化すように笑ってしまった。


「ははっ、俺が惚れるってのは諦めろ」


そうやって、強く、強く、強く、心に言い聞かせる。『他人を好きになるな』あのゴミのような、なんの価値もない3年間で唯一学んだ事じゃないか。


(いや、何考えてんだ。今から楽しいトコ行くってのに…バカか)


自分で自分を咎めて、それを頭から振り払う。


「まぁそんなことより、行こうぜ」


「うん!」


そして俺とアリスは一緒に、遊園地に向かった。

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