接触

私には、好きな男の子が居る。黒川空、名前に出すだけでも恥ずかしい人と、同じ部屋で、同じベットで寝たときは本当に襲いそうになったけどなんとか我慢したのを覚えている。今も時折襲いそうになるけど、拳を強く握って耐えている。っと、話が逸れたね。まぁ結論から言うと私は空以外の男には興味が無い。全く、微塵も、かけらも興味が無い。

その理由は色々あるんだけど、やっぱり初恋の相手だったからってのが一番大きい。幼稚園の頃、何の色も無かった私の世界を変えた人だったから、忘れる訳がない。


「ふぅ…」


だから、この事件に巻き込むわけにはいかないから下駄箱で空と別れた。これは、アメリカで起きたトラブルと、とても似てるモノだと感じた。

不本意だけど、男ウケする体だったから男子にモテた。それが気に入らない女子からのイジメ。アメリカって結構自由奔放だから、日本よりも凄い。髪を掴まれたり暴力を振るわれたりとか…。


(ははっ…私って最悪…)


決して空には言えない、私の闇の部分。空に会いたかったから日本に来たのも事実だけど、もう1つだけ、理由がある。空に会いたいと言う気持ちを免罪符にして、イジメから逃げて来た。これを聞くと、空は幻滅するだろう。

これも私の醜い部分、空にだけは絶対嫌われたくない。だからそれを話したくないという、子供のような理由。


「だけど…」


空が隣で居てくれるから、私は耐えられると思う。もし空がいなくなったら…自分がどうなるのか……分かんないけど。

そんな事を思いながら、私は屋上のドアノブを回した。


「……」


私の暗い感情とは真反対の眩しい夕焼けが私を出迎える。すると、大量のゴミが私に降り注いだ。


「イェーイ!!ナイスショット〜!!」

「キャハハハハッ!!大丈夫ぅ?ゴミまみれじゃん!」

「告白だと思って期待しちゃったでしょ!?あんたみたいな尻軽女は!」


私に特に多くの悪意を飛ばしてた、3人のクラスメイト。名前は確か…忘れちゃった。私は屋上のドアを閉めて鍵を閉めた。これで、屋上の光景を見ようとしても出入り口がふさがれてるから無理。普段出入り禁止のここには防犯カメラすらないから、もしかしたら屋上に来るかもしれない空には絶対見られない。


「期待なんかしてない。で、アンタら私に何の用なの?」


「は?何その態度。あんま調子乗ってんじゃないよ!!」


そう言って投げてくる紙を丸めたモノ。それに思わず笑ってしまいそうになる。


「何笑ってんのよ…」


「いや…アメリカの奴に比べればだいぶ幼稚だなぁ…と」


正直そう思ってしまったのだから仕方がない。というかアメリカでは、男と女の筋力差が圧倒的すぎたから為されるがままになっていただけで、何も努力もせずに助けを乞うお姫様じゃ無い。


「ねぇ、ここで起きた事、黙っといてくれない?」


初めてやる喧嘩に、少し緊張しながらも、この3人になら勝てると体が告げていた。だけどその瞬間、屋上の柵を片手でよじ登って来る人物。


「アリス、テメェが手を汚す必要はねぇよ。こういう仕事は、男である俺にやらせろ」


私が、今最も見られたく無かった姿が、私の愛おしい人物に、見られた。

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