第3話8‐11

薄明の曇り硝子

鏡越しの己を

抱きとめる

過去も未来もない

かいなで包んで

柔らかな今を

抱いて

【誕生】


捕破(とらわ)れた殻の

空に泣いても雫は降らない

伝わるは微熱。

薄膜は今でも覚えている

暗がりのこわいろ

【胡蝶の夢】


青冷めた未来に

希望は入らない

垂れ流す聲も

囀りも癇に障る

いっぱいの蠱毒

咀嚼して飲み下す

ぎこちなくも。

【明方】


築いて往く 満ち

気づいて終う 幸

急速に暗転へ向かう

漠然とした未来は

我を忘れても

必然死に逝くまで。

誰だって

生き急いでいる

【あかり】







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