『飛翔』

 僕の名前はヨウタ。

 僕は今日、生まれ育った巣を去って、大きな空へと旅立つ。

 青い空を見上げると、とても広くて、一度飛び立てば何処までも飛んで行けるような気がした。

 目を閉じて、今までのことを振り返る。

 この世に生を受け、兄弟とともに餌を与えられ、育てられた。

 そして紆余曲折があって、僕はようやくここに辿り着いたんだ。

 長いようで短かった記憶をゆっくりと追いかける。

 本当に色々あったんだなぁと思うと何だか笑いがこみ上げてきた。

 今考えるとものすごく単純な答えをなかなか出せていなかったんだなってね。

 もっと早く、空へ飛び立っていれば良かったな。

 僕は怖がりだったから、そのせいで踏ん切りがつかなかっただけなんだけどね。

 思考の海から引き上げて再び目を開けると、そこにはやはり、終わりの無い青の集合があった。

 ところどころに浮かぶ白い雲が眩しい。

(もう何にも縛られることはないんだ)

 この広大な空を飛んで、そして僕は自由を手に入れるんだ。

 ああ、風が気持ち良い。


 そして僕は両腕を広げ、青へと向かって飛び立った。
















「ねえ、知ってる?前にここの屋上から飛び降りた人がいたらしいよ」

「それってデマじゃなかったっけ?」

「ううん、それが本当らしいの。だからここの屋上は立ち入り禁止なんだって」

「ふーん。でも何で自殺なんかしたんだろうね」

「それがね、虐待が酷くて家畜みたいな扱いを受けてたらしいの。その人のお兄ちゃんはそれが原因で死んじゃったみたいだよ」

「え…それは怖い話だね…」



























『オマエニボクハコロサセナイ』

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