『手術』

 僕の名前はユウキ。

 今日、僕は生まれて初めて手術をする。

 数年前に重い病気をしてしまった僕はずっと入院していた。

 僕の家は裕福じゃなかったから、なかなか手術ができなかったんだ。

 でもこの春、ようやく手術を受けることが叶う。

 こんなに嬉しいことってないよね。

 やっと僕、治るかもしれないんだよ。

 そうしたらまた、友達と遊べるかもしれない。

 勉強もたくさん頑張ったら、テストで良い点を取れるかもしれない。

 そうしたらパパとママは褒めてくれるかな。

 でもやっぱり、ちょっと怖い。

 だってお腹切られちゃうんだよ。

 血もたくさん出ちゃう。

 ほら、今だってカチャンカチャンって音がする。

 マスクした大人が僕のお腹の中を覗いて、何かを確認しながら必要なものを摘出していくんだ。

 あーあ、早く終わらないかな。

 病気が治って大人になれたら、立派な仕事についてたくさんお金を稼ぐんだ。

 僕には弟がいるんだけど、元気だった弟も病気をしちゃってね。

 手術すればすぐ治るみたいでドナーも最近見つかったらしいんだけど、何せ僕の家は貧乏だから。

 だから僕は病気を治して弟のために頑張るんだ。

 だって僕は、お兄ちゃんだから。

 あっ、やっと手術が終わったみたい。

 それにしても身体がうんと軽くなった気がする。

 これってやっぱり病気が治ったからなのかな。
















 あれ、でもおかしいな、どうしてだろう。

 僕、呼吸ができないみたい。
















「弟さんの手術が無事、終わりました」

「本当ですか?!良かった…」

「それで、兄の方は」

「お兄さんはこちらに。弟思いのお兄さんなら、弟さんの一部になることができて嬉しいと思いますよ」

「それで、お金の方は…」

「お兄さんの場合、脳以外は健康そのものであったのでお金は結構です。弟さんの入院費もありますし、これ以上の負担は厳しいのでしょう?」

「ありがとうございます、先生」

「いえいえ、全ては患者様の為ですから」




















『ボクノゾウキヲカエシテ』

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