ミコトの場合2―ペナルティー―
天使の仕事はあくまで魂を天界に導き、輪廻の流れに乗せること。それは間引きした命でも、事件事故で断ち切られた命でも変わらないのだとか。ミコトのように自分で強制終了してしまった魂にペナルティーを課すのも、それが輪廻のための必須条件だから――らしい。
だから『成仏なんかしなくてもいい。ペナルティーなんか受けない』なんてことになってしまうと非常に困るのだという。
……ほかでもない。ミコトがそういって困らせたのだが。
このチンピラ天使の話によると『現世にとどまりつづけると、やがて自我を失い人を襲う悪霊となる』らしい。それまでには数百年かかるというが決して避けることはできないのだとか。
今、百個の魂を集めるか。数百年先のばしにして、その後永遠に人を襲いつづけるか。二者択一だなんて。あんまりだと思う。
――なにより、罪のない魂を狩るなんてやっぱりイヤだ。
そういったミコトに、チンピラ天使は妥協案を出した。
『それなら罪のある魂だけ集めればいい』と。
このままでは、いずれ無差別に人を襲う存在になってしまう。不本意でも、受けいれるほかなかった。
罪の定義をどうするか。これもむずかしかったけれど、最終的に『悪意を持って人を傷つけている人間』ということにきめた。
そしてチンピラ天使は、そういう人間だけを集めるための仕掛けを、天使の力をつかってネットにはりめぐらせた。『一夜のキリトリセン』の入り口となるホームページをつくったのも
今日と明日をわけるとか。生と死をわけるとか。それはぜんぶチンピラ天使が流したデタラメで。あの空間に入った時点で、現実世界にある肉体はほぼ死んでいる。キリトリセンをまたいでも、またがなくても、もう死は決定しているのだ。あとはその魂を、現世から完全に切り離して回収するだけ。それがミコトの役目だ。
だけど今、キリトリセンのまえで立ちつくしているのは、小学生のころからのミコトの親友だった。高校でハブられるようになってからもそれまでと変わらず接してくれた、たったひとりの親友。
――どうして。
「なんでよ! 罪のない人間の魂はとらないって約束だったじゃない!」
「なんでって。あそこにいるってことは罪があるってことだよねぇ。…………あー、なるほど。そういうこと」
また心を読んだのか。
「……んー、あぁ、これは……うん、あの魂には罪があるねぇ。いやぁ、女って怖いねぇ」
ニヤニヤとミコトを見る目はあからさまに楽しんでいる。どうやら、親友の過去ものぞいたらしい。
……すごく、イヤな感じがした。なんなんだ、いったい。
「見る?」
ミコトが答えるまえに、親友だった彼女の過去が頭の中に流れこんできた。
――――――――――
――――――――
――――――
――うそだ。
こんなの、
「うそよ――――ッ!!!!」
(続)
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