第3話 このポンコツ性奴隷は不良物件でした その1
【キャン視点】
俺たちは、町にある教会の近くまで来た。
入り口にはアルキメ様の像が立っている。
話によると、ここはアルキメ派の宗派らしい。
「キャン様、私達は教会には入れませんので、ここまでです」
「え?そうなの?」
ミラーは俺の耳に近づき、他の人間に聞こえない声で話す。
「はい。私は
「なるほどね……そりゃ入れませんわ」
「敷地内は聖水が撒かれていますので、入ったら燃えてしまいます」
アルキメ派の者でも、邪の世界の者は教会じゃ受け入れられないようだ。
異世界でシスターさんとのイチャイチャイベントは無くなってしまったが、良いだろう。
そこで思いついた。
「クリス、そこから真っ直ぐ500m程歩いてみて」
「え?なんでですか?」
「良いから」
「……わかりました」
クリスは俺の命令に不信感を抱きながらも、アホヅラのまま歩き始めた。
そして、教会の敷地内に入って戻って来た。
特に異常は無さそうだ。
「歩いてきたけど…どうしたんですか?」
「あ…うん、ごめんね」
「なんで、そんな可哀想な子を見る目で私を見つめるんですか!?」
だって、君って本当に死神職を解雇された事になってるんだもん。
信じてたアルキメ様に捨てられて、見知らぬアラサーの日本人の性奴隷になったんだ。
あんなクソブラック企業に勤めていても解雇される恐怖に怯えていた俺は、このアホヅラに同情してしまった。
一歩間違えば、このアホヅラになっていたんだから。
死んでドライバーを強制解雇されて、労働奴隷ですよ。
「クリス…大事にするから安心しな…」
「それは、ありがとうございます……」
「性奴隷としてだけど」
「このクソ平面野郎!」
バシンッ
っと綺麗なビンタを受けたが、清々しかった。
そんなやり取りを俺達がやっていたら
「キャン様、奴隷達を解散させてよろしいですか?」
待っていたミラーからそう言われた。
「待ってくれ…」
奴隷達は早く教会に行きたそうな顔をしていたが、最後にやる事がある。
「ミラーは、この奴隷の首輪を外す事は出来るか?」
「可能でございますが、MP消費管理をしながら判断した方が良いかと」
「あれ?召喚が終わってもMPって消費するの?」
「はい…私の魔法やスキルを使う際には、召喚時のMPとは別のMP消費が発生します」
そうか……これだけ良い物件が低MP消費で抑えられた理由がこれか。
ちゃんとMP消費を確認しとくか。
俺のMPは、
HP:1300
MP:200
ミラーを使役する際のMP消費は、
召喚:400
通常攻撃:0
通常防御:0
………
………
………
項目が多すぎるので、解除魔法だけを見てみよう。
解除魔法、契約解除(首輪):40
奴隷の数は10人はいるな。
「MP足りないんだけど、どうしよう」
「なら、ドレインタッチでMPを吸収してはいかがでしょうか?ドレインタッチは成功すれば、MP消費はありませんので」
俺は、MPが多そうな者をステータスウィンドウで探す。
奴隷達ではMPを吸収出来そうにない。
一応、この
期待してないけど
HP:300
紙の様にHP低いな。
MPはっと……
MP:9999999………
は?何これ?
MPがカンストしてんじゃん。
こいつからは性的搾取しか出来ないとを思ってたけど、ちゃんと使えるじゃないか。
こいつは採取する側でなく、採取される側だったのだ。
「お前って、ただのオマ◯コしかないと思ってた」
「なんですか!?その最低な評価は!」
「ドレインタッチして良い?」
「まあ、人助けのため……」
俺はクリスの許可を得る前に
「ドレイン・タッチィィィィィイィィィイ!」
「ぎゃああああああああ!吸われるゥゥゥゥ!」
氏名:クリス
MP:77777777……
氏名:キャン
MP:2000
備考
これ以上、MPは貯めれません。
「キャンさん!もう貴方のMPはカンストしてぇぇぇぇぇぇぇ!」
「うるせえ!取れる時に取っとくんだよ!」
と言ってもこれ以上のドレインタッチに意味は無いけど。
氏名:クリス
MP:54627……
氏名:キャン
MP:2000
備考
これ以上、MPは貯めれません。
「ぎゃああ!もう無理!絞らないで!」
氏名:クリス
MP:230000
氏名:キャン
MP:2000
備考
これ以上、MPは貯めれません。
「もう!イク!イク!イクゥゥゥゥゥ!」
氏名:クリス
MP:200
氏名:キャン
MP:2000
備考
これ以上、MPは貯めれません。
「もうダメェ……立てないよぉ」
「無駄に絞りすぎた」
クリスがどこにイッタのかわからないが、立てない状況になってしまった。
痙攣もしているが大丈夫だろう。
「ミラーこれでMPは大丈夫だと思うから、奴隷達の首輪を外してくれ」
「了解しました。ほら、奴隷達よ並べ!」
「あ〜ん♡ミラー様の奴隷で良いですから、首輪は外さなくて良いのに」「首輪が無くなってもミラー様の奴隷ですよ」「私は(以下略
次から次へと奴隷達が解放され、教会に向かっていく。
最後のメルシーちゃんの首輪を外すと、すぐには教会に向かわないかった。
「キャン様、今回は本当に命を救っていただいて…」
「良いよ、そんなのは」
「ですが…」
「困っている人を救うのが当たり前だ。もしまた困った事があれば助けてやるから」
こんな臭い台詞は初めて言う。
恥ずかしすぎて、辛くなったので立ち去ろうと思ったら
「キャン様は、通信魔法は使えますか?」
「可能だけど…」
「なら…ええっと」
メルシーちゃんは、指先で線を描き何かの模様を発現させる。
「これが私の通信先のなので、受け取っていただけませんか?」
メルシーちゃんは、頬を赤らめ真剣な顔を向ける。
これは、メアド交換みたなものですな。
こんな可愛い
「ありがとう受け取っておくよ」
「あ、ありがとうございます!」
今にも泣きそうなぐらいに喜ぶメルシーちゃんの笑顔が眩しい。
絶頂し過ぎて立てない、クリスの間抜けズラを眺めて眩しさを中和しなければ。
メルシーちゃんの通信先の書かれている模様を触れると
通信魔法
備考
アルキメ様、クリス様、メルシー様が通信先に登録されました。
メルシーちゃんに連絡すると。
「これで連絡先交換は終わりかな?」
『はい、ちゃんと繋がっていますよ……』
メルシーちゃんは、俺の声が聞こえた瞬間に更に顔が赤くなっていた。
こういう純粋な所がクリスには足りないのだ。
「それでは、失礼致します」
ペコリと頭を下げると、メルシーちゃんは教会の方に消えていった。
「死神なのに、命助けちゃったよ」
でもいい気分!
「キャン様の活躍はとても偉大なものです。死神であろうと、下等な種族達を守るのもアルキメ様の配下についた際の義務でございます」
「アルキメ様って結構お優しい神様なの?」
『死に
「その通りでございます。アルキメ様程、愛に満ちた神様はおりません。この世界で一番信仰されている神様なのが、その証拠でございます」
そんな優しい神様を怒らせたクリスって、性奴隷に落とされて正解だったんじゃないか?
アルキメ様は、三度目じゃなく数十回目の正直でクリスを死神職から解雇したのだろう。
「落ち着いたから宿でも……金が無いから今日は野宿だな」
「キャン様、申し訳ありません。もうそろそろ、召喚も限界時間を過ぎてしまいます」
「結構長く、いられるんだね」
「キャン様が更に経験値を積んでいけば、召喚時間も伸びます」
「じゃあ、その時は飲みの相手もしてくよ」
「はい……キャン様とでしたら、夜のお相手も致しますよ」
ミラーの最後の笑みはすごくエロかった。
ミラーって女なのかな?
うーん…女なの?って聞きづらいし……男だった場合は、夜のお相手は遠慮したいな。
そうだステータスウィンドウで、
「それでは失礼致します」
俺がステータスウィンドウで確認する前に消えてしまった。
まあ、これは次の楽しみにしよう。
「ほら、クリスそこで寝てないで寝れそうな場所探すぞ!」
「だめぇ……立てにゃい」
未だに復活しないクリスを置いて行ったら、浮浪者に犯されそうなのでおんぶしてやる事にした。
森の中は魔物がいそうなので、路地裏で寝る事にする。
明日は家主に見つかる前に起き、行動する事にしよう。
硬い路地をベットにして横に並んで眠る。
「キャンさん…今日はありがとうございます」
「素直で怖いんだけど」
「貴方は私の命の恩人ですよ。お礼ぐらい言わせてください」
俺はお前に殺されそうになったし、俺がお前を轢き殺してしまいそうだったが。
「やっぱり、私って何をしてもダメダメなのかな…」
今日は色々あって落ち着いたせいで、クリスの心は寂しさを覚えたのだろう。
大切な性奴隷の愚痴ぐらい聞いてやろう。
「ようやく気づいたの?」
「酷いですよ…でも、死神職って身の丈に合っていない仕事だと思っていたのも確かです」
「理由はあるのか?」
クリスは、雨掛かりで見えない夜空を見上げる。
「私って殺生が苦手で……誰かの命を奪うってなったら体が動かなくなるんです」
だから、路上で待ちぼうけていたのか。
俺が人を殺したのは今日が初めてだったが、魔法で殺したので感覚がない。
クリスの話を聞いた限り、死神になったからだと思ったが、そうでもないのかもしれないな。
「自分が嫌になっちゃいます」
「じゃあ、なんで死神職にこだわるんだ?」
「アルキメ様に従いたいからです」
この町のあちこちにアルキメ様の像が確認出来る。
中にはお守りのイラストがアルキメ様の裸婦画だったのは驚いた。
だって、どれもおっぱいと身長の大きさが全然違ったんだもん。
この世はアルキメ様の事を絶世の大人な美女だと思っているんだろうな。
「孤児だった私を引き取って、実の娘のように可愛がってくれましたし……私も恩を返すために一生懸命勉強して死神職になれました」
「そりゃ、死神やめたくないわな」
死神職ってアルキメ様に直接従える事の出来る職種だもんな。
落ち込んでるクリスを励ましてやるか。
「失敗なんて幾らでもあるし、自分の事が嫌になる事もある。でも、一生懸命だった過去は消えない。アルキメ様もお前の事をちゃんと見てくれているよ」
「でも…死神は解雇されちゃいましたし」
「だが、死神を補佐する役目に変わった。死神業務は実質的に続けられる。だったら、今までやりたいと思っていた事を変わらずやればいい」
「キャンさん……」
「俺だって失敗続きだよ。やりたくもない仕事ばっかりやって、そのくせ辞める勇気もない」
俺は格好つけて、クリスの頭を引き寄せる。
こんな経験やった事ないし、ブ男にされても気持ち悪いだけかもしれない。
「でも、お前がその勇気をくれた」
「私は、そんなつもりは…」
「結果的にそうなったから良いの。……前の世界じゃ失敗で終わったと思ったけど、こっちの世界じゃ成功だと思ってる。死神って言う格好いい職業。悪を倒す正義のヒーローも出来る」
形は違うが少年の頃、憧れたヒーロー像に似ている。
「だから失敗と思うな。これから俺と一緒に死神職を頑張っていこう」
「キャンさん…」
「お前が人を殺せないなら、俺がそれをやる。俺は、頭も悪いし魔法も疎いからお前が考える頭になってくれ」
それを何というんだろうか?
ああ、そうか…
「だから、パートナーとして頑張ろう」
俺はクリスの頭を撫でてやる。
彼女が嫌がっても無理矢理にだ。
「ありがとう…ございます」
そう言ってクリスは、俺の胸で静かに
「これから、よろしくお願いしますね」
そう呟いたのだ。
クリスは俺の胸の中で眠っている時、ステータスウィンドウに通知が来た。
差し出し人は、アルキメ様だ。
『キャンへ
アルキメである。
本日をもって妾は『死に
クリスには伝えてあったから、再度クリスに言う必要はない』
ああ、だからクリスがここまで落ち込んでいたのか。
尊敬する上司が引退するのだ、最後に格好良い姿を見せて心配させたくなかったのかな?
だったら、俺の慰めは的外れだったのかもしれない。
だから、俺はモテないんだ。
『明日、会いに行くのでよろしく頼む』
最後にそう書いてあったが、早朝に来る事は無いだろうと思いそのまま寝る事にした。
つづく
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