第19話 さよならと約束


レティシアの声が

女神の元に響き渡る


「時は完全に、来た。

受け継ぐ者よ。この試練を

越えていきなさい」


凛とした女神の

声がレティシアの内側に響くと

同時に更に

酷い痛みに襲われた


レティシア「っ!…耐えて、見せるわ。

耐えなければ越えられない!」


レティシアは根性よ。と耐えて耐えて耐えた


悲鳴をあげながら

時に兄を傷付けた。


どれくらい時間がたっているのか

時間の感覚がない


顔には明らかに

衰弱しているのが見える


レティシア「ああ、あああぁ」


レティシアが叫んだ


ファウ「女神!聞こえてるんだろ?!人間として寿命を生きさせてやってくれ。

人間として耐えてもっと生きる術は俺が探す。女神になんてさせないでくれ!もうレティシアは苦しんだ。これ以上苦しませるな!」


女神が遠くで黙って聞いていた

レティシア自身が

何より兄と兄達がいる世界を

崩壊させたくない

守りたいと願っている

このままでは均衡が崩壊し

放置していれば世界ごと滅びを迎える


レティシアはそれを

把握している



だから人間のままで。

という兄の想いは聞き入れることは

出来なかった


それにレティシアはもう

既に。

女神として作り替えられている

今、彼女が苦しんでいるのは


思うよりずっと

彼女の資質が高くて

彼女特有の

新たな力に目覚めているからだ


レティシアが苦しみ

流れ落ちる血。

体力的にも覚醒できるか

ギリギリの状態だった


そんな中

レティシアの内側に声がまた

響いた


?(僕の加護も、限界があるよ。なら、

この魔力使って。女神に、なって…)



レティシア「はぁ、はぁ。誰なの?

少し痛みが、止まった?」


痛みが引いてきたレティシアに

様々な知識、自分の力の性質、

世界の流れ、

力の使い方が突然流れ込んできた。


先程の痛みが嘘のような身体のかるさ。

溢れていた血は止まり

傷が癒えていた


ファウ「レティ!」


シモン「あ…」


レティシアは軽く宙に浮かんでいた


レティシア「……私は、、、女神に。

…なれたのね」


シャンという音と共に

レティシアが唄を紡ぐ


レティシア「ねじ曲げられたものを、在りし日の正しさに。紡ぐ唄は理。

全てを浄めて。」


シモンの姿がゆっくり

ゆっくりと本来の姿に

戻っていく。優しげな青年に

なっていく。


シモン「私は…

…あぁ、愛しき女神の声が、聞こえます」



レティシアから発っする

唄と輝きと共に世界の歪みをも

修正されていく。


レティシア「賢者シモンをソウセイノメガミの元へ」


紡ぎ出すと虹の橋が出来上がり

かの女神が待っていた


シモン「女神よ…」


女神「私はもうソウセイとは名乗れない。

一介のただの女神。貴女だけの」


シモンは駆け出し

女神に寄り添った

橋とシモン達がいる領域が

見えなくなる


シモン(ありがとう)


女神「よく、越えたわ」


レティシアは

役割を果たしたのだった

ここに新たな女神が覚醒した


レティシア「…兄さん、異端者と呼ばれる人間はこの世界にはもう、きっと生まれないわ。

後は人間次第よ。そして」


ファウ「レティ?」


レティシア「私は兄さん達を見守ってるわ、この約束は今度こそ、絶対よ…さようなら。」


レティシアはそう言い

姿を消した


ファウ「レティ!!」


ファウは叫びレティシアを掴もうとしたが

遅かった

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