第69話 彼の為に出来る事
その後それ以上の魔物の襲撃はなく、船は無事港に辿り着いた。サークが船体に出した被害に関しては、サークのお陰で魔物を一掃出来たのは事実という事で不問になった。
私の怪我はかすり傷だったけど、不衛生な武器による傷だった為かサークの手で念入りに消毒された。……自分は同じような怪我をしても、水で洗う程度で済ませる癖に。
サークにそこまで心配させてしまう、自分自身がもどかしい。もっと私が強ければ――私がサークにとって頼れる存在になれれば、きっとこんな事にはならないのに。
そんなモヤモヤを抱えたまま、私とサークは中央大陸の玄関口、ミレニア国の王都シュヴァリエへと到着した――。
「……」
布団を被ったまま、何度目になるか解らない寝返りを打つ。どんなに目を閉じても、眠気はなかなかやって来ない。
その原因は――。
「う……ぐう……っ」
(……まただ)
隣のベッドから聞こえる、苦しげなサークの呻き声。それが悪夢にうなされてのものだと、私だけが知っている。
ノア達と戦ったあの日以来、サークは毎晩のようにこうして悪夢にうなされるようになった。それはきっと、サークがノアに操られ私に刃を向けたあの戦いの再現。
何で、それが解るのか。理由はサークが必ず漏らす、この言葉。
「嫌だ……死ぬな……クーナ……!」
「……っ」
うなされる時、サークは必ず私の名前を呼ぶ。だから、嫌でも解ってしまう。サークが今、どんな悪夢に苛まれているのか。
最初の頃は、サークがうなされる度に起こしていた。けどすぐに、「俺を起こすより早く寝ろ」と起こすのを拒否されてしまった。
それにどんな夢を見ているか、詳しい内容は絶対に教えてくれない。何度聞いても素っ気ない態度で、「忘れた」というばかりだ。
「……やっぱり、このままじゃ駄目だ」
ぽつり、私は決意を口にする。ここまでの道中、ずっと考えていた事。
サークに、これ以上負担をかけない。その為に今、私が出来る事は――。
「一人で依頼をこなして、私は一人前なんだって……認めて貰わなきゃ!」
明日、サークが起きる前に宿を出て、ギルドで依頼を探そう。そう心に決め、私は今夜は寝ないで朝を迎える事にした。
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