184.第28話 4部目 諸外国
最初の
アロウティは世界の中央に位置する大陸で、その周りは海で囲まれており、そこから相当に離れた場所に別の大陸が存在しているらしい。
この地図も何処まで正確かは分からないが、大体は把握出来る。
国の数はアロウティを含め8つと少ない。
【ムーナティ王国】
まず、アロウティから最も近い国は、アロウティの南方に位置しているムーナティ王国。
国土の広さはアロウティの半分ほどで、アロウティとは同盟国。
元々はアロウティで暮らしていた異世界人が移り住んだ土地…開拓した土地らしい。
一部、アロウティよりも暑い地域があり、恐らくその辺りが赤道と思われる。
その辺りで温帯植物を育てている様だが…。
アロウティ同様に砂漠化が進んでいるらしく、現状はあまり宜しく無いようだ。
それでも、国土の狭さからか、アロウティよりは砂漠化は進んでいないらしい。
あるいは、アロウティよりも砂漠化を深刻と受け止める要人が、ムーナティ王国には居るのかもしれない。
【リメル帝国】
続いて、アロウティから海を挟んで東に位置する国、リメル帝国。
いつくかの大陸に分かれており、それら全てを領土としている。
それらの領土を治めているのは一人の女帝で、どうやら女性優位の国らしい。
リメル帝国よりも北に位置する国と同盟を結んでいて、アロウティとは関わりを持っていない様だ。
地図の位置関係的にリメル帝国とは、アロウティとさほど気候の変わらない場所っぽいのだが…砂漠化はしてないのだろうか?
ムーナティの様な情報が無い事から察するに、砂漠化はして無い物と思われるが…。
正確な情報までは分からないが、聖女伝説とやらがある国らしい。
伝説を含めて女性が注目される国の様だ。
【クォールマギク連邦】
リメル帝国と同盟を組んでいる国の名が、クォールマギク連邦。
国土はムーナティ王国よりも小さいかもしれない。
何やら、本の解説を見るに、クォールマギクは独自の魔法技術を持っているらしい。
その魔法技術に関しては何も書かれていない。情報が入ってこないのだろうな…。
恐らく、想像するに同盟国であるリメル帝国とはその技術などで提携してるのだろう。
気候としては寒い地域にある様だし、リメル帝国の温帯な気候で出来る作物などの輸入なども行っていそうだ。
【ビース・カトリー】
クォールマギルから北西の方へ目を向けると、目に入ってきたのがビース・カトリー。
クォールマギク同様に寒い気候の国で、北の方に行くほど極寒らしい。
そんな大地で暮らしているのは、何と獣人らしい!
聞き慣れぬ人種名に驚いて僕は静かに目を見張った。
内容から察するに、動物の姿をした人種らしく、極寒の土地でも問題なく暮らせているらしい。
と言う事は多毛種系の獣人…なのだろうか?
一度会ったら確実に驚く自信がある。
【魔公国】
ビース・カトリーの情報で驚いた僕の目が、うっかり見逃す所だった国が魔公国。
ビース・カトリーから狭い海を隔ててある、小さい陸が領土の様だが、間違いなくこの世界で最も極寒な土地の筈だ。
一体、そんな場所にどんな人間が暮らしているのか…と思い、魔公国の説明に目をやると、ビース・カトリー以上に驚いた!
何と、魔公国は魔王と名乗る悪魔が治めており、魔物と言う生物が多数生息しているらしい。
その殆どが凶暴なため、絶対悪として人類の敵に認定されているらしい。
しかし、お隣の国であるビース・カトリーの住民である獣人達が強力な軍事力を持っているらしく、魔公国の住人?が他の国へ来る事は無いのだとか…。
一体、どうしてそんな存在もが、この世界に来ているのか不思議で仕方がなかったが、それ以上に詳しい事情は書かれていなかった。
【サザギミ王国】
ビース・カトリーと魔公国の情報で食傷気味になった僕の目に止まったのは、アロウティの西に位置するサザギミ王国。
この国の情報を見て、僕は更に食傷を起こす。
サザギミ王国は、元はアロウティ神国で重犯罪を犯した異世界人の流刑地だった。
帰還魔法で帰される事なく、アロウティから追い出された異世界人が流れ着く土地。
しかし、それは昔の話で、今は流刑された異世界人の子孫達がサザギミ王国で生活しているらしい。
土地は元より乾燥しているらしく、今のアロウティよりも遥か昔から砂漠と化している。
元流刑地の名に相応しく、厳しい土地環境らしく、神代が参加したアロウティ防衛戦の敵国はこのサザギミ王国だったらしい。
恐らく、サザギミ王国よりもまだ生きている土地のアロウティを乗っ取る腹づもりだったのだろう。
あるいは、単なる恨みか。
現在では和平を結び、戦争を仕掛けられる事も仕掛ける事もないそうだが…。
どちらにせよ、サザギミ人はアロウティ人を敵視している可能性が高いな。
いや、その逆も然り、か…。
【シュロルダ共和国】
最後に目にした国はシュロルダ共和国。
共和と名がついてるため、国を収めている人間は国民から選ばれた人物の様だ。
どうやら、この世界で尤も魔法技術が発展している国らしく、魔法に関連する生物や人種もシュロルダに多く存在している事が分かる。
説明文の中に精霊やら、妖精やらと言った名前が見受けられ、魔公国とは正反対の立場に居る国の様だ。
国民全員が魔法を使う事に積極的らしく、日々魔法技術を発展させているらしい。
しかし、魔法を使わない人種に対する差別的な態度があるらしく、他の国との交流は殆ど持っていない。
国の中で全て賄えている為、輸入品に頼ることもないのだろう。
うーむ。どれだけの技術か想像もつかないが、シュロルダならば植林技術など朝飯前なのでは無いだろうか?
尤も、それを教えてくれと願っても、聞き入れては貰えそうに無い様だが…。
…と、ここまで諸外国の情報に目を通してから、僕は深い深い溜息を吐いた。
アロウティと同盟を組んでいるムーナティ王国以外の国は、アロウティとの交流を持っていない事が如実に分かる。
この程度にしか諸外国の事情が分からないと言う事は、情報交換する機会すらないと言う事だ。
海で隔てられており、お互いが滅多に近づけない事も原因の一つだろうが、魔法という技術を発展させていけば、情報交換の幅が広がるのでは無いか?と言う気がしてならない。
そう思いながら、僕は左手の甲を見た。
何も無い肌色の僕の左手の甲には、緑丸くんが描いた魔法陣が確かに存在している。
そして、その魔法陣には緑丸くんと通信出来ると言う機能が備わっているのだ。
何故、緑丸くんがそれを描けるのかは疑問だが、そういった技術があるのだと単に飲み込んでしまえば、情報交換の場でこの仕組みを利用出来るだろう事は明白だ。
シュロルダ王国辺りなら、その技術くらいは持っていそうだ。
あるいはクォールマギクの独特な魔法技術の発展を以って、通信技術は出来上がっていそうだが…。
それらの情報も入ってこないのは、我が国が他国の眼中に入っていないからだろう。
唯一、サザギミだけはアロウティの領土を侵略しようとしていたが、今のアロウティでは、サザギミと状況はそう変わらない。
そもそも、和平を結んだからには軽々しく攻めては来ないだろう。
だが、油断をして良いわけでは無い。だからこそ、神代は軍事技術を強化しようと目論んでいる訳で…。
「ー…オ様。テオ様」
考え込む僕の耳にかすかに聞こえてきた声に、僕は慌てて返事をした。
「は、はい!」
返事の後で図書室の扉が開き、フレディさんが顔を見せた。
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