146.第22話 3部目 異世界人連盟とは?
数十分後。
3人分の料理が殆ど同時に出され、僕達は目の前に置かれた料理に生唾を飲み込む。
細切りにされた肉と茹でられた麦と、とろとろのチーズが混ざり合ったリゾット。
チーズの匂いと肉の香ばしい匂いが混ざり合い、鼻をくすぐる。
これは…実に美味しそうである。
「うわ!こっち来てから、マカロニ見るとか思わなかったわ!」
出された料理を見て、レオンくんはそう叫んだ。
レオンくんに提供された【本日のオススメ】は、肉と豆とマカロニが油で和えられた物だった。
匂いからすると、どうやら塩味と山椒で味付けされているらしい。
使用している油はオリーブの油だろうか?
…そういえば、オリーブの事を何と呼ぶんだろう?
「マカロニってよりはペンネなんだが…」
「ペンネぇ?何それ?」
「マカロニより輪のデカくて、端が斜め切りされたパスタ」
「パスタ?…あぁ、スパゲティの事ね」
「いや、スパゲティは太めの長いパスタの事だぞ?」
「んな細かい事知らねぇって!いただきます!」
リョウくんからの細かな解説を無理矢理振り切って、レオンくんは料理を食べ始めた。
それに続いて、僕とエヴァンも食べ始める。
木で作られたスプーンを使い、リゾットを掬って少し冷ましてから口に入れると、チーズの豊かな香りが広がった。
丁度良い塩加減の中に、肉の旨味が良い具合に入り込んでいる。
麦飯の絶妙なぷちぷち感も良い。
味わって咀嚼し飲み込んだ後。
「美味しい!」
思わず、素直に感想を口にしてしまった。
転生してから、ここまで凝った料理を食べたのは初めてだ。
使われている食材からして、ウェルスには無い物ばかりなのだから無理もないのだが…。
僕は感動しながらリゾットを頬張り続ける。
すると、レオンくんが一口頂戴と言いながら、僕の皿に手を伸ばしてきた。
代わりにレオンくんからペンネが贈呈されたので、それも食してみると、こちらも文句なしに美味しい。
塩味と山椒で味付けされたペンネに、肉と豆が良いお供となっている。
ほんの少し辛く感じるのも良い。
これは、所謂ペペロンチーノなのだろうか?
僕とレオンくんがお互いの料理を交換しているのを見て、エヴァンも自分の料理を分けてくれた。
白くて丸い団子状に形成されたニョッキは弾力がある。
もちもちとした食感とバジルの爽やかな風味が、とても合っている。
3人でわいわいと食事を楽しみ、食べ終わる頃にはすっかり満足していた。
…まさか、親父さんを連れ戻しにいく道中で、こんなに美味しい物を食べる事になるとはなぁ…。
親父さんやお袋さんに悪いと思いつつも、僕はすっかり目新しい料理を存分に堪能した。
「口に合ったみたいで良かった」
食べ終わった皿を下ろしに来たリョウくんに言われた。
その顔は嬉しそうに見える。
「とっても美味しかったです」
「そうか」
満足した僕を見てか、リョウくんも満足そうに笑う。
そして全ての皿を持って厨房に戻って行く。
「マジ美味かったー!リョーちん、何でこんな村に居んの?」
またも突拍子もなく、かつ失礼極まりない質問を投げつけたレオンくん。
幸いにも、食堂で酒盛りしていた地元住民は、レオンくんの質問が聞こえなかったのか、気にしていないのか変わらず騒ぎ続けている。
しかし、首都ではなく砂漠化が進む村に店を構えている理由は、確かに気になる。
「首都じゃ店を出せなかったから」
「何で?」
「何でかなんて俺が知りたい。何故か、【連盟】からの支援を受けられなかったんだ」
「レンメイ?何それ」
「な…。まさか、お前…【異世界人連盟】に入ってないのか!?」
ここで、その名前を聞く事になるとは。
【異世界人連盟】なるものがあるとは聞いていたが、実態については良く分かっていない。
これは、【異世界人連盟】の存在理由を知れる良い機会では無いか?
「来てから直ぐ首都出たから、知らねー。で、何なの?レンメイって」
「はぁ…。【連盟】って言うのは、その名前の通り異世界人で構成された組織だ。
イモンディルアナで活動する異世界人同士で助け合うのが目的とされてる。
元の世界に戻るまでの間の生活支援とか、こっちで生活していくなら働き口の紹介とか…。
俺の場合、店を出したかったけど、何故か支援を受けられなかったから首都を出たが、本来なら生活の保証をしてくれる組織だぞ」
なるほど。
確かに了承もなしに呼び出された異世界人からすれば、こちらの世界での生活は困難を極めるだろう。
故に異世界人同士で助け合う組織が生まれ、それが【異世界人連盟】との名前を冠している…と。
道理でレオンくんが盗賊のカシラをしていたのを驚かれた訳だ。
【異世界人連盟】の支援を受けていれば、盗賊になる理由は無いのだから。
「ふーん…。転生者とかも、その【連盟】に入らなきゃなんねぇの?」
僕の事を考えてだろう。
気になっている所をレオンくんが代わりに質問してくれた。
レオンくんの質問にリョウくんは怪訝な顔をしながら答える。
「転生者?…さぁ?転生者自体、存在が珍しいらしいし…」
「やっぱ、転生者って滅多に居ないんだ」
「そりゃそうだろ。転生者って、この世界の女神が呼び出してる存在らしいし…。
滅多に居たら俺達みたいなのが呼び出される理由が無い」
ふむ。リョウくんの言葉はご尤もだ。
女神ティアナが転生者をしょっちゅう呼び出して居たら、国は転移者を呼び出すよりも転生者を探す事に注力する筈。
「勝手に呼び付けておいて「直ぐには戻せない。暫くこっちで暮らせ」だもんなー。
リョーちんの場合、呼び出された挙句に【連盟】からも見限られてカワイソー」
そう言って、レオンくんは意地悪そうに笑った。
対してリョウくんはムッとして言葉を返す。
「お前な…。さっきから思ってたが、年上に対する礼儀ってものが無いのか?
馴れ馴れしくアダナを付けるわ。敬語は使えないわ。勝手に話を進めるわ。
不遜な態度がカッコいいとでも思ってるんじゃないか?」
リョウくんは、態々厨房から出てきてレオンくんの正面に立って説教する。
喧嘩を売られたと思ったのか、レオンくんは楽しそうに更に意地悪い笑顔を深めた。
「えー?何?怒ってんの?自分が大人だって言いたいんなら、
子供の俺の言う事位、カンヨーに受け止めてクダサイヨー」
レオンくんの言い方にカチンと来たらしく、リョウくんは眉を顰めて言い返した。
「大人だからこそ、子供のお前を指導する為に叱ってるんだ」
「あーあー、出た出た。子供を導くため~って建前掲げて、自分の考え押し付けるヤツー」
「…そんな態度を続けてたら、不興を買う事になるぞ」
「リョーちんの、みたいな?」
「分かってるなら年上を敬う事を覚えろ」
「敬う価値がリョーちんにあるなら、敬ってやるよ」
「…何だと?」
2人の間にバチバチと電流が走っている様が見える。
出会って直ぐにここまでの口喧嘩が出来るとは…大したものだ。
レオンくんの喧嘩っ早い性格も災いしているのだろうけど、リョウくんも中々に負けず嫌いらしい。
そんな2人の仲を取り成そうとしているのか、エヴァンが困った様な笑顔で割り込む。
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