39. 第5話 2部目 弓を教えて!
1週間後。
僕専用の弓が完成した!
親父さんのものと同じように作った為、僕より少し大きい弓になった。
初心者には扱いづらい代物となってしまったのは否めないが、今後の事を考えたら、大きくても良い筈だ。
お袋さんと村の年寄りたちは、順調に草履作りを習得し、現在では帽子作りに挑戦して貰っている。
麦藁帽子だ。今の時期には欲しくなる一品である。
見本用に僕の頭の大きさで作った麦藁帽子を作ったら、かなり好評であった。
ただ暫くの間日中には必ず被っていろと言われた事には驚いた。
何なら眠るまで被ってても良いとまでお袋さんに言われたが、それは流石に丁重にお断りした。
しきりに似合うだの、可愛いだのと言っていた事から察するに、単純に帽子を被った僕の姿が好みに嵌ったのだろう。
まさか、見た目の問題でそこまで喜ばれるとは思わなかった。
この村には鏡がないので僕自身の姿を確認することは出来ないのだが、そこまで帽子の似合う容姿に生まれたのか?と不思議でならない。
お袋さん似であると言われているものの、親の欲目で見られている気がしないでもない…。
が、まぁ、喜んで貰えたならそれで良しとしておこう。
ともかく、お袋さんと年寄りたちには引き続き、藁造作で資金繰りをしてほしい。
その間に、僕と親父さんは弓の練習がてら森に行く事になった。
「ー…じゃあ、まず俺が打つから、そこで見とけ」
「う、うん…っ」
遂に弓矢の練習だ…!
前世でも弓道は見た事しかなかったため、弓を扱うのはこれが初めてである。
初めてのことにワクワクしながら胸を高鳴らせて、親父さんの挙動を見守る。
親父さんが矢を番えて、弓を構えた。
そして、目標の木に向かって打つ!
親父さんは何本も矢を放ち、その全てを命中させている。
素晴らしい命中精度だ…。素人が作った弓矢を使っているとは思えないほどである。
しかし…何故だろう?何か違和感がある。
親父さんの矢を打つ姿は滅法格好いいし、矢も全本命中しているのに、何かが違う?
うーん…。
我ながら謎の違和感の正体を探っていると、親父さんは全本打ち尽くした様だ。
「どうだ?分かったか」
詳しい説明も何もなく、とにかく見て覚えろと言いたげな姿勢である。
「…格好いいって事は分かったけど…」
「…そっ、んな事聞いてんじゃねぇ!」
「あたっ」
素直な感想を言うと、親父さんは照れながら僕の頭を小突いた。
帽子を被っていたからか、親父さんが手加減してくれたからなのか、痛くはなかった。
「とりあえず、弓の番え方からだな」
そう言いつつ、親父さんは矢を回収に向かった。
僕は親父さんが戻ってくるまでに、弓に矢を番える練習をしてみる。
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