35. 第4話 7部目 捌きます
親父さんが2羽の産毛を火で炙り綺麗になった所で、僕たちは内臓を抜く作業に入る。
切り込みを少し入れつつ、肛門に手を突っ込み手探りで内臓の全てを引っこ抜く。
この時、体内に残っている糞が本体につかない様に注意しなければならない。
肉から糞の匂いがする様になるからだ。
親父さんは実に鮮やかに内臓を抜きとり、脇へ避けた。
僕は僕で、久々に鳥を捌くため少し緊張しながらも、無事に内臓を抜き終えた。
抜いた内臓を見ながら、これを夕飯のおかずにしようかな。などと考えていたら、親父さんが達観した表情で言う。
「…お前…慣れてんなぁ…」
「あぁ…うん…そうだね」
前世でも鳥を捌いた事があるため抵抗はなかったのだが、それが却って親父さんには奇異に見える様だ。
無理もない。6歳の子供の身体で平気な顔して鳥を捌いているのだから。
僕の手つきを見て慣れている事を悟ったらしい親父さんは、僕にナイフを渡してくれた。
取り扱いには十分に気をつける様に言われながら、僕は引き続いて鳥を捌いていく。
ぼんじりを切り落とし、ももと手羽を切り分ける。
まずはももの処理から。ももに切り込みを入れ、中の骨を取り出す。
骨は関節からポキっと折って、肉から剥がす様に取る。
足先の方は切り落として、もも肉の完成だ。
次に手羽。手羽先と手羽元に切り分け、胸肉を取り分ける。
燻製にしようと思うと、手羽先と手羽元は難しいかな?
中まで火が通る環境での燻製なら大丈夫だろうと考え、そのために石で炉を作る必要が出て来た。
そうでなくとも、小さい炉はあったほうが何かと便利かもしれない。
そんな事を考えつつ、最後に本体から、ささみとせせりを切り分ける。
と、ここで、親父さんがじっと僕の手元を見ている事に気がついた。
「…何か間違えてる?」
不安になった僕が問うと、親父さんはハッと我に返って答えた。
「違う。…そこまで捌くもんかと感心してただけだ」
「えっ、普通はここまで捌かないの?」
「ももと、胸が切り分けられば良いかと思ってたが?」
なるほど。この世界では、普通はもも肉と胸肉しか食べないのか。
もしかして、2ヶ所しか食べるところは無いと思ってる…とか?
「ちなみに、これも調理によっては食べられるけど…」
そう言って、僕は最初に抜き取った内臓を指差す。
「何!?お前は前世で臓物を食ってたのか!?」
案の定の驚きっぷりに、もはやジェネレーションギャップなんてものでは済ませられないほどの疎外感を感じてしまった。
その後、親父さんは僕が本体から切り分けた、ささみとせせりを同じ様に切り分ける練習をし、切り分けに成功。
それらを、塩水に漬け込む。この状態で一晩置くため、燻製にするのは明日だ。
ちなみに燻製にする部位だが、もも、胸、ささみ、せせり…と比較的火の通りやすい部位に絞った。
更に火が通りやすい様、ある程度の大きさに切り分けてから塩水に漬け込んである。
手羽元と手羽先は、燻煙で火が通るか心配だったため今晩の内に食べてしまう事にした。
親父さんが食べたがったと言う理由も大きい。
久々の肉と言う事もあり、やはり直ぐにでも食べたいのだろう。
それは僕とて同じだ。比喩でも何でもなく、前世ぶりの肉食である。
いつも通りに粥状にした麦飯に、セイショクノケイの手羽元と手羽先を煮込んだスープが今夜のご飯である。
実に贅沢な気分だ。
料理された状態の手羽元と手羽先を見たお袋さんは目を輝かせて喜んだ。
「まぁ、美味しそう!」
「ね」
そそくさと食事の用意を済ませ、僕たちは久々の肉の味を堪能するべく席に着く。
「よし。食べるか」
「うん。いただきます」
僕が手を合わせてそう言うと、2人も自然と手を合わせてから料理に手を付け始めた。
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