33. 第4話 5部目 羽処理したいんですが…
「燻製か…。それなら俺にも出来るぞ」
意外や意外…と言ったら失礼だな。狩人らしい親父さんなら、知っていても可笑しくは無いか。
そういえば、僕がまだ乳飲み子だった時に肉らしいものを食べてたな。
その頃には狩り具が手元にあったのかもしれない。
「じゃあ、父ちゃんに任せても良い?」
また親父さんに負担がかかってしまうが、今回は僕もそれなりに手伝える筈だ。
「おう。任せろ」
「ありがとう。じゃあ、下拵えしてしまおうか」
そう言って、僕はセイショクノケイの羽をぶちぶちと毟り出す。
毟った羽も有効活用したいため、見本のために作っておいた藁籠の中に入れていく。
ふわふわと漂ってしまうため、慎重に籠に入れつつ全ての羽を入れ終えたら、上から布を被せて紐で縛る。
これらの一部は矢の羽部分を作るのに、早速活用させて貰う事にしよう。
さて、大方の羽は毟り終えたのだが、まだ産毛ほどの羽毛が残っている。
これらは火で炙って焼き切ってしまいたいが、火の魔法となると我が家ではお袋さんしか使えない。
しかし、首を切り落とされた鳥の死骸を見て、あれだけ騒いだお袋さんに、そんな事を頼んで良いものか…。
だからと言って、日中の仕事で疲れきっていると思われる、ウィルソンさんをわざわざ我が家に呼びつけるのは忍びない。
ともなれば、取れる手段は1つ。
「母ちゃん…」
避難先の奥の部屋の扉を少し開けて、お袋さんの様子を伺う。
「…終わったの?」
何が、とは言わずに確認するお袋さんの表情は実に、か弱い。
「えぇと…手伝って欲しいんだけど…」
終わってない事を言外に主張しつつ、協力を願い出る。
すると、お袋さんは毛布を頭から被り引きこもってしまった。
「嫌!その手の処理なら、ネッドが出来るでしょー!」
「そうなんだけど…少し羽が残っちゃって、それだけでも焼いて欲しいなぁ…と」
毛布の中に引きこもったお袋さんに、僕は精一杯穏便に話しかける。
しかし、お袋さんは出てこず、そのまま喚き立てる。
「どうして!?旅してた時は私が手伝わなくても処理出来てたじゃ無いっ」
「…そうなの?」
こっそりと部屋の中を覗き込んでいた親父さんに話しを振ると、親父さんは気まずそうにしながら答えた。
「あ~…焚き火で炙ってたんだが…その火を点けてたのはアメリアだ」
「…だって」
結局の所、お袋さんが使う火の魔法なしには、羽を炙る事も燻製肉を作る事も出来ないと言う事になる。
うーん。こう聞くと、やはり打ち鉄と火打ち石が欲しくなるなぁ。
「~っ。嫌なものは嫌よ!」
断固として拒否の姿勢を崩そうとしないお袋さん。
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