31. 第4話 3部目 ヤケイ?ノケイ?
僕は抱きしめられながらも、何とか親父さんの様子を見ようと無理に首を後ろに反らせる。
反転した世界の中、認識できたのは親父さんの困った顔と、親父さんが手に持っている鳥の死骸だった。
…鳥の死骸?
「父ちゃん!鳥!獲れたの!?」
久々のタンパク質、もとい肉!
僕が目を輝かせながら問うのとは正反対で、親父さんは実に居心地悪そうに答えた。
「…あ?あ、あぁ…2匹狩って来たが…そういや、アメリアはこういうの駄目だったな。暫く振りで忘れてた…」
「いやぁーー!ネッド!い、家から出てってー!」
お袋さんの容赦のない拒絶の言葉に、親父さんはかなり傷ついた様子で静かに出て行ってしまった。
「と、父ちゃん!ま、待っ…ぐっ…ぅ」
お袋さんに凄い力で抱きつかれたまま、僕は必死にお袋さんを宥める。
その間、家の外で1人寂しく待っていた親父さんの心境を考えると、何とも切なかった。
お袋さんを宥めつつ奥の部屋に避難させた後で、僕は親父さんの狩ってきた鳥の死骸を観察する。
鳥の名前は2羽ともセイショク ノケイ。
ノケイ…もしや、野鶏の事だろうか。確かに、”野”はヤともノとも読むが…。
そもそも、この世界では漢字を使用するのか?
文化的に見ると、明らかに日本ではないし、ましてや中国でもない。
にも関わらず、漢字が読めることを前提とした鳥の名前と言うのは、どうにも違和感がある。
しかし、漢字が前提としての名前と言うのなら、この鳥の外見を捉えている名前であると言わざるおえない。
2羽の内の片方は首から胸にかけて鮮やかな青い羽をしている。
残念なことに頭は切り飛ばされてしまっているので、鶏冠があるかまでは確認が取れないが…。
「父ちゃん。この鳥、頭の色も青かった?」
「あぁ。この手の鳥は青いぞ。よく地面をほっつき歩いてるし、狩りやすい」
なるほど。親父さんの話で納得した。
この鳥の名前に漢字を当てるなら、青色野鶏だろう。
そして、これと良く似た名前の鳥が地球にも居る。
赤色野鶏。良く知る鶏の元となったと言われているキジ科の鳥だ。
日本には純粋な赤色野鶏は居ないものの、家畜として飼われている鶏の大体が、赤色野鶏と交配して出来た雑種であるため、日本人としても非常に馴染み深い見た目の鳥である。
そして、このセイショクノケイは、こちらの世界に置ける赤色野鶏なのだろう。
この辺りの地域は暖かい方だし、このセイショクノケイも繁殖しやすいのではないかと推測を立てる。
と、言うことは…!
「その鶏、今度見つけたら雄と雌と最低2羽は捕まえたいなぁ」
「あん?何でだ?」
親父さんの疑問に僕は、ウェルスの発展の可能性を説いた。
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