21. 第3話 1部目 根菜畑
太陽がじりじりと照りつける季節がやってきた。
麦の収穫は直ぐそこだ。
しかし、その前に僕は親父さんに頼んで、麦とは別の畑を作って貰った。
「ー…ふぅ、こんなもんか?」
「うん!ありがとう、父ちゃん!」
「これも、どうせ村のためだろ?それにお前もやってたろ」
だから一々気にするなと言いたげに、親父さんは僕を見下ろす。
親父さんが汗だくまみれになって作った畑には、コンダイの種が植えられている。
これは、1週間前に商人エヴァンから買い取った品物の1つ。
良く見知った根菜と同じ見た目の、根菜の種である。
名前を聞いてピンとくると思う。
良く知っている、似ている根菜とは…そう大根だ。
エヴァンから買い物をする前に、親父さんと入念に打ち合わせをしている時に大根の名前を出して、似たような名前の根菜が無いか?と親父さんとお袋さんに尋ねた結果、分かった名前だ。
種の購入後に、種を鑑定眼で見たらコンダイの名前が確認できたため、間違いない。
安心したと同時に、つくづく名前の法則はいい加減だと思った瞬間だった。
そして、そのコンダイの種を新たに作った畑に植えて貰ったのだ。
畑作りのほとんどは親父さんが行い、僕は種を植える作業を少し手伝った程度だった。
本当に親父さんの勤労っぷりには頭が上がらない思いだ。
「さて…それじゃあ、明日からは麦の収穫に入るぞ?」
「うん。お疲れの所申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いします」
深々と頭を下げて親父さんを労ったつもりが、親父さんから鉄拳が落ちてきた。
「~~っ!!」
かなり痛い。
「俺に…俺たちに、んな喋り方すんじゃねぇって言ってんだろ!!」
「うぐ…ご、ごめんなさい…」
相も変わらず、親父さんは僕が畏まった喋りをするのは嫌らしい。
いや、今のは僕の言葉選びが悪かった。
もう少し、柔和な言葉を使えば少なくとも殴られることは無かっただろう。
前々から畏まった喋りを嫌っていた、親父さんの気持ちを無視する言動であった事を反省しつつ、僕たちは帰路に着いた。
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