13. 第2話 4部目 色々見つけよう

それから更に翌日。

前日に間違えたやり方をしていなければ、これで木炭が完成している筈だ。

僕と親父さんは、まず灰となった麦藁と籾殻の中を木の棒で掻き回して、木炭があるかを確認する。

「あるみたいだな」

木の棒の先に手応えを感じ取った親父さんが言う。

そして、木の棒に当たった物体を手前に転がして灰の中から出した。

転がり出て来た物は、円柱型の真っ黒な炭。

木の棒で強めに突いても簡単には砕けないのを見ると、成功した様だ。

「木炭、出来てるね!」

「あぁ…本当に出来てやがる」

虫の付かなくなった麦を見た時と、同じ様に目をまん丸にして驚く親父さん。

この調子では、銑鉄が出来た時どんな反応をするやら…。

何はともあれ、これで銑鉄への第一段階が済んだと言うことになる。

全ての工程が上手くいったら、木炭も作れるだけ作りたいものだ。

使い道は燃やすだけではないのだから。

さて、木炭は確保出来た。次の行動に移ろう。

僕たちはコタバを見つけた草原方面へ向かった。

約2時間半を掛けて、僕たちは大山の麓に到着。

僕たちがするべき事は以下の4つ。

大山から滝が流れ出ているのを見つける。その滝が川となっている事を確認する。

川底に砂鉄があるのを発見する。または、山肌から鉄鉱石が露出しているのを発見。

これらを達成し、川沿いに村方面へ帰路を辿れば今日の目的は達成されるだろう。

大山から出た滝による川が村付近に存在して居れば、精錬の度に毎回2時間半の距離を歩かずに済む。

やはり、この距離は6歳児の体には中々に堪えるので、村付近まで川が続いている事を願うばかりだ。

疲弊する僕を見て、親父さんは周囲を見渡してから言った。

「ここで休んでろ。俺は滝を探してくる」

「う、うん…お願いします…」

こうして親父さんは目的の1つ、滝を見つけるため僕を置いて歩いて行った。

残された僕は休憩しつつ、周りの石を鑑定眼で見て鉄鉱石とあるものを探す。

どちらかと言うと、この場で最も欲しいのは”あるもの”の方なのだが、果たして上手い事見つける事が出来るか…。

「お前の親父、やっぱり魔王なんじゃねぇの?あるいは体力バカ」

僕の肩に乗って一緒に来ていた緑丸くんが言う。

「引き合いに出すものが極端だなぁ」

「じゃあ魔力バカ」

魔王と体力バカの間を取って出た言葉なのだろう。

「うーん。流石に初めて聞く言葉だなぁ」

「お前の親父の魔力量が多いのは事実だろ」

そう言うのって目に見えるものなのだろうか?

体力などは視覚的に見えるものでは無いし、見えたとしても違和感しかない。

それとも、この世界では普通のことなんだろうか?

鑑定眼を更に鍛えれば、自ずと体力量やら魔力量やらが視覚的に把握出来る様になるやも?

「…緑丸くんは親父さんの魔力量や、僕の魔力量が見えてるの?」

「体の周りに、もやもやっとしたものが見えるくらいだけどな」

なるほど。何となく想像が付く。蒸気の様な形で魔力量が見えていると言うことだろう。

しかし、今の僕の鑑定眼ではそう言ったものは見えない。

あるいは人によって見え方が違うのかもしれないが、まだまだ鍛錬が足りていないと言う線の方が濃厚だ。

「…ちなみに、僕の魔力量ってどれくらい?」

「お前と同年代の人間と比べないと魔力量の限度は分かんねぇ。

ただ、まぁ…あの親父に比べたら、大して無ぇぞ」

「そっかぁ…」

まぁ、これで親父さんと同じだけ有ると言われていたら、反応に困っていた所だ。

もし同じだけあるなら、魔力を体力に変換する魔法なんて物が有れば、今の僕にはうってつけだろうに。

しかし、話せば話すほど、緑丸くんの知能は非常に高いと感心してしまう。

他のキリキリムシと話をしてみても、ここまで会話が弾む事は無いのだ。

キリキリムシたちのリーダーと言うだけあって、緑丸くんは特別な個体に違いない。

僕は良い話し相手を見つけたものだ、と改めて思った。

それから、数十分後。

少しばかり体力が回復した僕は、親父さんに居るよう指示された場所から

なるべく離れない様にしつつ鉄鉱石とあるものの捜索を続けていた。

実を言うと、もう既に鉄鉱石は結構な数を目撃している。

しかし、それらを持ち帰るのは後日へ回す。そもそも、精錬が上手くいく保証が無い上に鉄鉱石では精錬も難しくなるからだ。

まず、砕く必要がある。この時点で僕たちの手には余る作業だ。

出来る事なら、砂鉄から精錬した銑鉄を商人と取引をした後に、既製品である金槌や斧を手に入れたい。

さすれば、鉄鉱石にも手をつける事が出来る筈だ。

ならば、未だに岩肌を舐める様にして、”あるもの”を探し回っているのは何故か?

その”あるもの”とは…磁石である。あるいはマグネタイトと呼ばれる鉱石。

そもそも磁石とは自然鉱石の1つであり、電流が銅と鉄を含む鉱石に通る事で出来上がる代物である。

何も1から人の手により生み出された代物ではない。

緑豊かな大山辺りも当然雨は降っている。時には雷を伴う、雷雨となることもあるだろう。

雷が降る土地の石ならば、磁石になる可能性は十分に有る。

必ずしも必要では無いが磁石さえ見つけられれば、砂鉄集める事は容易になる筈。

見つけられるものなら見つけておきたい一品である。

探し続けて数十分。そろそろ親父さんも戻ってくるかもしれない。

僕は親父さんは帰ってくる前に…と思いながら鑑定眼を屈指して、鉄鉱石を拾っては鑑定した。

これじゃない。これでもない。と言いながら、次々と鉄鉱石を打ち捨てていると

ある鉄鉱石の周りに砂利がびっしり付いているのを発見した!

高い可能性を秘めたその石に僕は飛びつき、鑑定眼を使い何の成分が含まれているかを確かめる。

大量の鉄と銅が含まれており、僅かに電流らしきものが通っているのが見えた。

電流らしいものが見えたのは、この時が初めてである。

これは散々鉄鉱石を鑑定して回ったお蔭で鑑定眼が養われたと言う事だろう。

「あった!これだ!」

発見した磁石の周りに付いた砂利を取り払い、僕は磁石そのものの姿を確認する。

黒く凸凹した石。姿形は僕の知っている形では無いけど、これは紛れもなく自然磁石だ。

これが長方形に整形出来たら、コンパスの代わりになるのだけど…まぁ、追い追い。

「これが何だってんだよ?」

緑丸くんは僕が持っている磁石に飛び乗って、不思議そうに磁石を見つめている。

「これで砂鉄を集めやすくなるんだよ。手で掬っても取れることには取れるけど、磁石が有るのと無いのとじゃ、有る方が断然砂鉄集めが楽になるんだ!」

「ふーん」

興味無さげに相槌を打つ緑丸くん。

しかし、じっと磁石を見つめているのを見た限り、少しは興味を持ってくれている様だ。

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