12. 第2話 3部目 中身はじじいですが?
そして、翌日。
僕と親父さん、それに緑丸くんは森の中を歩き回り、倒木を探した。
畑の管理はウィルソンさんに任せてあり、今日1日を木炭作りに集中させるつもりだ。
「しっかし、てめぇもよくこんな事思いつくよなぁ」
僕の肩に乗って居る緑丸くんが、半ば呆れた様子で言う。
「前世の記憶を何とか呼び起こして、やっと…って感じだけれどね」
緑丸くんと話して居ると、ついつい砕けた口調になってしまう。
やはり、緑丸くんが同い年だからだろうか?
緑丸くんが6歳だと聞いた時は、それはもう驚いたものだ。
「にしたってだ!次々と役に立つ事ばっかり思いつくじゃねぇか。
俺様たちを苦しめた毒にせよ、てめぇの発案だろうが」
「根に持ってるなぁ」
「ったりめぇだろうが!俺様は、一生許さねぇつもりだからな!」
殺虫剤の一件で散々耳元で騒いだ後、緑丸くんは訝しむ様子で僕の顔を覗き込んできた。
「ー…てめぇ、まさか、前世はじじいだったのか?」
「どうして、そう思うの?」
緑丸くんの疑問に、僕は敢えて聞き返してみた。
普段の口調や行いから、そう思われても不思議では無いと自負はしているが、
緑丸くんの見解を知りたくなったからだ。
「そりゃガキっぽくねぇし。むしろ年寄りくせぇし。
知ってる事の多さも、話に聞く転生者以上だし。
っつーか、知ってる事の種類が違うし?とにかく、お前は異質なんだよ!」
遠慮のない言葉の数に僕は思わず笑ってしまった。
「あははっ。凄い貶されようだなぁ」
「ほれみろ!そう言う所だ!普通は貶されてるって分かったら、怒るだろうが!何で、怒んねぇんだ!」
そう言って、緑丸くんは不満気に僕の肩で地団駄を踏む。
「何でって言われてもねぇ…。こればかりは性格としか言いようが…」
「…今、お前の顔がしわくちゃ顔のじじいに見えたんだけど」
「おや。正体を見破られてしまったか」
「やっぱり、じじいじゃねぇか!」
と言うように楽しい会話を繰り広げながら、僕は親父さんと付かず離れずの位置を保つ。
親父さんには出来るだけ素の僕を見られる訳にはいかない。
何故なら、ものすごい剣幕で怒られるからだ。
あれは言葉を喋られるようになって来た3歳ごろの事だ。
お袋さんと親父さんを、そのまま「お袋さん」「親父さん」と呼んだら…。
「可愛げのない呼び方すんじゃねぇ!せめて、父ちゃん母ちゃんって呼べ!」
…と、若干涙目で怒鳴られたのだ。
あれは、色んな意味で堪えた。
それ以来、僕はなるべく子供らしく居る事を心掛けて居る。
今世の両親である2人が望むなら、それには応えて然るべき。
それが恩返しの一環になるのなら余計に。
しかし本音としては、早い所大人になって素の僕で2人と話したい。
緑丸くんと素で話していて、これだけ楽しいのだ。その方が絶対楽しい。
そうこうと緑丸くんと会話をしながら森の中を探索し、約30分後。
僕たちは倒木を見つけ、前以って用意していた石で倒木を分解し始めた。
予想していた通り、倒木した枯れ木は石で叩いただけでモロモロと崩れていく。
この感覚が結構楽しい。地道な作業ではあるが、これだけ脆ければ、続けられそうだ。
そうして、僕と親父さんは倒木を見つけては崩していった。
ある程度集まった所で帰宅し、ミラー家の裏庭で早速木炭の作成に移る。
食料庫から麦藁と籾殻がそれぞれ入った袋を持ち出し、まずは麦藁を設置する。
その上に、木材、籾殻の順で重ね、お袋さんに頼んで火を点けて貰った。
火打ち石と打ち鉄があれば火は点けられるが…銑鉄をこれから作ろうと言う段階では出来ないので、仕方なく魔法に頼る他無かった。
火を扱うと言うこともあって、緑丸くんは火の元から離れた場所に避難して行ったり、
燃やして居る間に休憩がてら親父さんと雑談を交わす。
火の様子を見ながら、自然と鎮火していくのを待つ。
完全に鎮火したら1日置く必要があるため、その後僕たちはいつも通りに過ごした。
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