第8話

土曜日。本屋に寄ってお気に入りの漫画の新巻を手に取る。今回もきっと面白いんだろうなあと胸を弾ませながら会計を済ませ、サヤと待ち合わせの公園に行った。まだ昼前なのでサヤは居らず、1人漫画を開いた。


今回もなかなか読み応えのある内容だったな、と漫画を閉じた。時計は12時を回っている。そろそろサヤが来る頃だ。

『ハル!早いね!』

『漫画、読んでたんだ。』

『これ、面白いの?私も読んでいい?』

『いいけど、サヤが気にいるかはわからないよ。』

サヤは、いいのいいの、と言いながら僕が今日買った5巻を開く。途中からじゃわからないと思うけど、と言うと、うるさい!とサヤに怒られた。僕はおとなしくノートを開いて、物語の続きを考えようとした。


サヤは読み終えると、面白かったあ、と呟いて、キラキラ目を輝かせながら、

『1〜4巻来週持ってきて!忘れないでね!』と言った。単純に、気に入ってくれて嬉しかった。

本題に入ろうと思い、僕は恐る恐る聞いた。

『サヤはさ、なんで高校辞めちゃったの?』

サヤは一瞬顔を曇らせた。しかしすぐにさっきまでの顔に戻って、『だってつまんないんだもん』と頬を膨らませて言った。これ以上聞いちゃいけないのかもしれない、と僕は思った。話題を変えよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る