第7話

翌日、ふと昨日の公園に寄った。彼女が居るかもしれない、なんて勝手に期待しながら。でも残念なことに、彼女の姿は見られなかった。内心ショックを受けながら、昨日座ったベンチに一人で腰掛けて、ノートを開く。

『雨、女の子、真っ白な世界』

後ろから僕のノートを読み上げる声が聞こえた。ふと振り返ると、昨日の彼女がいた。昨日とは別人のような、満面の笑みを浮かべた彼女は僕の隣に座った。

『小説書いてるんですか〜、それで、昨日私に出会って、ネタにしようと思ったんですね!?』

こんなに明るい子だったのか、と思いながらぽかーんとしていたんだと思う。彼女が手をチラつかせながら、おーい?と声をかけてきた。

『あ、えっと、お兄さんの小説のヒロインになることになった、高校2年生17歳!ん〜名前は〜、サヤ!サヤがいい!』

僕と同い年の彼女は、サヤと名乗った。もちろん本名ではない。でも、本人の希望もあるので、物語のヒロインの名前はサヤにしようと思った。

『お兄さんって言われたけど、僕も高校2年生です。物語に登場する気は一切無いけど、、名前はハルで。すぐ近くの花咲高校に通ってるけど、君は?』

『花咲高校、懐かしい〜って言っても1年前かあ。あ、私は花咲高校に通ってた!同じだね!』

今は?転校したの?と聞きたかったけど、聞くべきではないと空気が教えてくれた。

『君の言った通り、物語を描きたくてね。だけど僕は、まだ君に会ったばかりで何も知らない。勝手に頭の中でストーリーを作ることだってできるけど、実在してるんだし、せっかくならお話聞きたいなあって思うんだけど。』

彼女はそれを聞いてクスクス笑った。僕は何かおかしいことを言っただろうか。

『今は高校どこなんだろう、って聞かないから、優しいなあって思ったのに、結局聞いてくるんだもん。あんなに泣いてた女の子の、その訳が知りたいのね、優しいのか優しくないのかわかんないね。』

『ご、ごめん。』

『高校は、1年の9月で辞めました。私ね、正直な人すごく好きだから遠慮しないでね、ハル。』


この日から彼女とは、毎週土曜日の午後に会うようになった。

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